ST 警視庁科学特捜班 毒物殺人<新装版> (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2014年7月15日発売)
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今野敏「ST警視庁科学特捜班シリーズ」第2作目(1999年9月単行本、2002年9月文庫本、2014年7月新装版)。
5人のSTメンバーの中で今回は毒物等の薬物専門家である山吹才蔵が活躍する。前回登場の警視庁捜査一課の刑事菊川吾郎警部補もSTの推理に今回も協力する。STキャップの百合根友久警部が頼りないのは相変わらずだが、菊川警部補の積極的関与で百合根警部を助け、捜査権のないSTがその特殊な力を発揮することが出来るのは今回も同じだ。

代々木公園、世田谷公園で連続して変死体が発見される。いづれからもフグ毒が検出され連続殺人事件として捜査本部が設置された。被害者の一人は暴力団関東英隆会と関わりがあるチンピラ杉田英吉19歳、もう一人の被害者はフリーのカメラマンでタレントのゴシップを追いかけていた笹本雅彦35歳。そしてそのタレントの所属事務所は関東英隆会の企業舎弟だった。捜査本部は関東英隆会絡みの事件として捜査方針を固めるが、STの推理は違っていた。

杉田英吉のパソコンに有名なテレビのアナウンサー八神秋子28歳の写真が大量に保存されていた。八神秋子には岩谷慎太郎という35歳のレストランチェーンを経営する実業家のボーイフレンドがいて、付き合う前まではストーカーに悩まされていた。そしてそのストーカーが杉田の可能性があった。
また岩谷には自己啓発セミナーを主宰している白鷺勇一郎という人物と繋がりがあり、秋子がセミナーに参加することになったことで事件は狂気の核心に迫る。

岩谷と白鷺は関東英隆会の下部組織と共に関係がある間柄だった。そして白鷺と秋子は学生時代に出会っていた。岩谷の秋子への異常な独占欲、嫉妬、病的な愛情。白鷺の秋子への身勝手な復讐心。秋子が白鷺のセミナーに参加して徐々に洗脳される前に岩谷も白鷺に洗脳されていた。三者の異常な関係が2件の殺人事件を起こす動機となった。
サディズムによる洗脳やや死人を蘇らせるトリックなど、何とも理解し難いストーリーだが、山吹才蔵が事件発生当初から感じていたインスピレーションが全て結びつき、STの面々の活躍で事件は解決する。赤城左門の法医学、青山翔の心理学、結城翠の聴覚、黒崎勇治の臭覚と柔術、4人の特殊能力が山吹才蔵をフォローして、事件解決、犯人逮捕までこぎつけるのだ。

捜査本部の全く予想していなかった事件の真相に指揮を取っていた池田厚作管理官は驚くもSTの能力に満足感を感じていたようだ。反してSTに否定的で排除を画策していた警視庁捜査一課刑事調査官の川那部遼一警視は鼻をへし折られた感じの退場シーンが今後どう言う関係の展開になるのかちょっと楽しみな気もする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年8月30日
読了日 : 2021年8月27日
本棚登録日 : 2021年8月21日

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