終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (4) (角川スニーカー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2015年12月26日発売)
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感想 : 15
4

3巻を読み終わった直後、ヴィレムが過去のゴマグ村に迷い込んでしまった展開はどんな道が待っているにせよクトリを助ける何かに繋がっていくと思っていたんだけどな……
まさか、第4巻の序盤からあんな描写が出てくるとは全く予想していなかったよ……
もっと言ってしまえば、この巻ではクトリに対する言及すらその序盤の話を除けば殆ど無い。それは前巻の描写があれ程までにこちらの感情を揺さぶってくるものであったことを考えると、とても意外なものだった

代わりにこの巻でメインとなってくるのはヴィレムとアルマリアの話。そこにネフレンという存在が面白い感じに関わってきた印象
世界が滅びる前にヴィレムはアルマリアの元へ帰ってくると約束した。けれど、約束は果たされずに終わってしまった。それを思えば舞台となるゴマグ村が夢で有ったとしてもヴィレムがその夢を満喫する道だって有ったはず。しかし、ヴィレムがそうしなかったのはきっとネフレンが傍に居たからなんだろうな

この巻では、ヴィレムのクトリへの言及は異様なまでに少ない。物語の割と早い段階でクトリ達への依存が始まり、前巻でプロポーズまでしたヴィレムがここまでクトリの事に触れないのは一種異様に映る。
クトリが既にどうやっても助けられないと知っているという点も有るのだろうけど、それ以上にヴィレムはどうしたって弱いから、あまりにクトリのことを思い出すとクトリを守れなかった事実に耐えられなくて壊れてしまうのかもしれない
クトリを助けられなかった事実から目を逸らしつつ、ネフレンを助けるために夢から脱出しようとする。そうすることでヴィレムは自身を守っているように感じられた


そして夢のゴマグ村では世界が滅びる直前の束の間の平和が描かれるのだけど……。何と言うか更に世界の謎が深まった印象
今回の描写で獣の正体、そして人類はどのようにして獣に変わっていったのかが描かれたのだけど、どうやって聖歌隊は人を獣に変えることが出来たのか、そもそも聖歌隊はどのようにしてそんな手段を手に入れたのか。また、師匠と聖歌隊の関連は?などなど気になることばかり
現代を基準に見れば昔の話だから、今後関わってくる可能性って低いような気がするけどヴィレムからすれば自分の故郷を舞台に人体実験が行われたようなもの。いずれ真実に辿り着きたいと思ったりするのだろうか?


そういえばこの巻では、ヴィレムの準勇者時代の数々のエピソードが披露されたね。こうして見るとヴィレムは化け物揃いの勇者一行の中で別方向の化け物であったことがよく判る
特殊な最終奥義でしか倒せない亜竜を蓄積ダメージで撃破、戦闘中に聖剣を調整しつつの二刀流。
超人というわけではないんだろうけど、自分の持てる技を出来る限り磨き上げ超人に近い存在になった化け物のような印象を受ける
つまりは誰にも出来ないことは全く出来ないが、誰かに出来ることなら飛んでもなく高いレベルで出来てしまう。ヴィレムはきっとそういう存在だったんだろうね


結局の所、夢のゴマグ村でヴィレムが出来たこととは何だったのかな?
夢の中だから何をしたって史実に影響を与えることはない。そして史実では果たせなかった約束を守る道もヴィレムは選ばなかった
もし、出来たことが有ったとするならば、もうどうしようもないほど助かる見込みのなかったアルマリアの嘆きをきちんと終わらせてあげたことだけ
それはあまりに悲しいことであるように思える

ただ、その行動によって現実の身体が壊れかけていたヴィレムは獣になり、延命する道に繋がった
ここから助かる道なんてあるようには到底思えないけど、アイセアやティアットによってヴィレムを終わらせる道に繋がるかもしれないならまだましだと言えるのかな?
それでもやはり悲しいことであるように思えてしまう


ヴィレムが夢のゴマグ村を駆け回る裏で何やらしていたエルク。今後は彼女も物語に関わってくるのだろうか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライトノベル
感想投稿日 : 2019年5月11日
読了日 : 2019年5月9日
本棚登録日 : 2019年4月27日

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