前巻ラストで安道から衝撃の一言を貰ったさらさは失意のまま帰郷…
そこに愛が同行して、道中では驚きの出逢いも有ったし、さらさもいつもどおりの賑やかさを見せるのだけど、ふとした瞬間によぎる影は消すことが出来ず
さらさの根幹を揺るがすような事態の中で描かれるのはまさしくさらさのルーツと言える物語だね
さらさは紅華入学時点から高身長とその天真爛漫さによって人の目を引く存在だったけど、歌舞伎の稽古をしていた頃から別の意味でも人の目を引く存在だったのか
その生まれから歌鷗の後継者として他人も自分も意識してしまう暁也。そんな少年の隣に立っても負けないくらいの存在感を放っているさらさは普通じゃない
その普通じゃ無さは紅華においては序盤は周囲から浮く原因と成り、いつの間にか周囲を引っ張る力となっていた
けれど、暁也との関係においてはひたすら暁也にプレッシャーを与える存在となってしまっているね。勿論、暁也がその窮屈な人生から追い込まれていた側面はあるのだろうけど、そこでさらさの存在が脅威になっていたような気がしないでもない
歌鷗が見ている前でさらさの方が目立ち、舞台で手本にならなければと気張ってもさらさの方がしっかり構えている
トドメに聞いてしまった噂話。これでは暁也がさらさに勝っている点なんて性別しか無い。だから自分を保つためには誰かにさらさの輝きを止めて貰うしか無かったのだろうなぁ……
子供心の一時の意地悪。それがさらさと暁也の運命へ決定的に影響してしまう哀しさ
そもそも女であるさらさが助六になるなんて無理な話だった。けれど、周囲の人間がさらさの輝きに夢を見てしまったように、さらさも夢を見ていたんだよね。
無理を無理だと子供に教えてしまう。そんな無慈悲が許されていいわけが無い
そして、許されない事をしてしまったと最も理解しているのは暁也自身なんだよね
さらさを強く傷つけ、さらさ祖母の葬儀には参列できず、稽古仲間や家族には無闇な反発をしてしまった
なのに、さらさの祖父には許されてしまった。それでは自分を許せない。だからこそ、暁也は誓うのだろうね。さらさから奪ってしまった助六の夢、それを目指すと
さらさは歌舞伎をルーツに持つから個性ある演技ができないように思われた
そのように行き詰まっているさらさ相手だからこそ、一度は行き詰まりかけた暁也にアドバイス出来るものが有ったのかもしれないね
さらさの歌舞伎はあの時から止まったまま。
そして歌舞伎は昔を再現しつつ新しさも取り入れ続けている。だからさらさは行き詰まりを解消するためにこのタイミングで再び歌舞伎に触れる必要があったのかもしれない。
助六の光景はさらさが舞台に立った時のまま。けれど、その中にいる暁也はあの時と違って堂々としていて……
この瞬間にさらさは本当の意味で自分は助六になれないのだと納得したのかもしれないな……
そして、アニメでは結局明かされることが無かったさらさ出生の秘密が……!そうか、そっちだったのか!
こういった背景を知ると、さらさが助六に憧れたのは当たり前の運命だったのかもしれないな……
- 感想投稿日 : 2021年10月13日
- 読了日 : 2021年10月12日
- 本棚登録日 : 2021年10月3日
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