群青のタンデム

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2014年9月13日発売)
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感想 : 74
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 長岡弘樹さんの新刊は警察小説である。警察学校での成績が同点1位だった2人、戸柏耕史と陶山史香を中心に展開する連作短編集になっている。

 この2人、交番巡査時代から手柄を競い合い、順調に出世の階段を上っていく。彼らの立場はどんどん変わり、最後には定年退職後を描くという、警察小説としては異例の大変長いスパンの物語になっている。なぜそこまで張り合うのか?

 これが男性警察官同士のライバル関係なら、さほど珍しくはあるまい。現在では多くの女性警察官が活躍しているし、女性警察官が登場する作品も多いが、男性社会での孤軍奮闘という描き方が多かったと思われる。

 互いの点数を探りつつ、利用できる局面では利用する。そんな2人だが、対等な関係とは言い難いことがすぐわかるだろう。どちらかといえば、耕史が史香に助け舟を出している。巡査時代の史香は、捜査手法といいあまりにも未熟に映る。

 2人の出世スピードの早さに戸惑うが、各編はミステリーとしての意外性に満ち、短編としての完成度も高いのはさすが長岡さんである。2人が年齢を重ねると同時に、かつての関係者が立場を変えて絡んでくる。連作としてもツボを心得ている。

 後半に入り、段々突っ込みを入れたくなる場面も増える。特に…おいおいおいおい、高い志はどうしたんだ…。しかし、経歴に傷がつくのを巧みに避け、出世街道を驀進する2人。もっとも、その陰にはゴニョゴニョ…だったわけであるが。

 最後の「残心」は前篇・後篇に分かれている。2人とも警察官を勤め上げ、もはや張り合う必要もないのだが、奇妙な関係に終わりはないらしい。警察OB・OGとして、鋭い観察眼はいささかも衰えていない。そして見抜いてしまった。

 何を見抜いたかは読んでみてください。こんなに駆け足で2人の警察人生を描き、最後の最後に何だよそれはっ!!!!! 元々後始末をきっちり描かず、読者の想像力に委ねる長岡作品ではあるが、こんな結末で読者にどうしろというのだ。やられました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 長岡弘樹
感想投稿日 : 2014年9月25日
読了日 : 2014年9月25日
本棚登録日 : 2014年9月25日

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