古本で購入。
民俗学者にして妖怪研究の大家・小松和彦が少年向け雑誌に連載した、妖怪たちの「身上調書」をまとめたもの。
酒呑童子や玉藻前、天狗につくも神…登場するのはどれも有名な妖怪ばかり。
彼らにまつわるエピソードだけでなく、その誕生や描かれ方の背景にも(ざっくりとではあるけど)踏み込んでいる。
人間世界の逆写しとしての妖怪世界、宗教の宣伝素材としてやっつけられる妖怪たち。
このあたりの要素にニヤリとしてしまう人にぴったり。
著者自身が「時間が不足した後半は不満が残る」と言うように、大嶽丸・橋姫の2編は確かにちょっとやっつけ感が漂う。
でも概説本としては、原著の出版が約20年前とは言え、結構いい。
小松さんには、2009年に開催された国立歴史民俗博物館・国文学研究資料館共催の「百鬼夜行の世界」展でお会いしたことがある。
まぁ会ったと言うか、ギャラリートークをする氏の話を間近で拝聴したっていうだけなんだけど…
丁寧な話でわかりやすい解説だったが、その際
「『百鬼夜行絵巻』は妖怪たちのパレードと言えるのか。絵巻という装置のせいでそう見えるのでは」
という説を披露しておられた。
ところが、この本では『百鬼夜行絵巻』をパレードであると言い切っている。
きっと執筆後の研究で、そうしたそもそもの部分に対する疑問が生まれたんだろう。
こういう学説の変遷を見るのも、研究者の古い本を読む楽しみのひとつかも知れない。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年9月9日
- 読了日 : 2013年9月9日
- 本棚登録日 : 2013年9月9日
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