古本で購入。上下巻。
「反乱軍」として祖国北朝鮮を出た9人のコマンドによる福岡ドーム占拠。
数百人の後続部隊が飛来し、高麗遠征軍を名乗った北朝鮮軍が日本政府によって封鎖された福岡の統治を開始する。
無為無策の日本政府が右顧左眄する中、12万人の北朝鮮軍が福岡へ向けて出港する―
経済的な凋落と国際社会における孤立により、一等国から滑り落ちた「近未来」の日本。
軍部の対外強硬派を反乱軍に仕立て上げて日本へ派遣、成功すればよし、失敗しても強硬派の消滅でアメリカなどと対話できると目論む北朝鮮の狡猾。
膨大な情報で構築された情勢がリアルに描写されている。
周辺国が静観する中で「暗黙の了解の内に日本は嵌められたのでは」と政府関係者が訝るあたり、大友克洋『気分はもう戦争』を彷彿とさせたな。
この作品は、言わばリアルさに裏打ちされたエンターテインメント小説。
どこかカリスマ的な奇矯な老人イシハラの下に集まった、殺人・放火などの重罪を犯した青少年らが高麗遠征軍の打倒に動き出すという筋書は、極端な話ラノベ。ちょっとご都合主義的な部分もある。
「他者」「世間」との致命的なまでのズレを抱える彼らを主題に描くための題材として、北朝鮮コマンドの福岡占拠っていうのがある感じ。
あとがきにあるように、小泉元首相の訪朝より以前から構想していた内容のようだし、何かしらの警鐘を目的にした作品ではおそらくない。
何だか文句言ってる感じになったけど、小説としてものすごくおもしろい。特に下巻は一気読みをオススメしたい。
福岡市中心部辺りの地理を頭に入れて読んだらもっとおもしろかったかも。
これが初村上龍だったわけだが、他も読んでみたくなったな。
- 感想投稿日 : 2013年8月31日
- 読了日 : 2013年8月31日
- 本棚登録日 : 2013年8月31日
みんなの感想をみる