日本の歴史をよみなおす (ちくまプリマーブックス 50)

著者 :
  • 筑摩書房 (1991年2月1日発売)
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本棚登録 : 294
感想 : 39
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古本で購入。

筑摩書房の社員向けに行った5回の講義をまとめたもの。
社員教育として第一線で活躍する歴史学者を呼ぶなんて、すごいし羨ましい。
他の出版社はわからないけど、筑摩の真摯さみたいなものが見えるな。

少し長いけど本文から。
「現在の転換期と同じように大きな転換が南北朝動乱期、14世紀におこったと考えられるので、この転換期の意味を現在の新しい転換期にあたってもう一度考え直してみることは、これからの人間が進む道を考えるうえでも、また日本の文化・社会の問題を考えるうえでも、なにか意味はあるのではないかと思うのです」
この視点から、「文字」「貨幣と商業・金融」「畏怖と賤視」「女性」「天皇と『日本』の国号」の5つのテーマで話していきます。

まさに網野史学のエッセンス満載の1冊。
その史学の是非はともかくとして、網野の著作を読むなら必ずリストに加えておくべき本かと思います。

読んでいておもしろかったのは「文字」の問題。
平仮名と片仮名の使い分け、というのは初めて知った。

文書での仮名の使用において、カタカナは圧倒的に少数派だとか。
近世になると助詞に使われる程度だったカタカナは、「文書の世界では基本的には口頭でいわれた言葉を記す文字」であったらしい。
文字の持つ機能や意味といったものが非常に意識されていたんだろうね。

他のテーマについての講義も抜群におもしろい。
個人的には、網野の天皇制度に対する態度には全然賛同しないんだけど。
でも本のおもしろさは間違いなし。中世史をかじろうとする人にオススメの本。

一緒に買った『続』の方も楽しみ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年8月16日
読了日 : 2013年8月16日
本棚登録日 : 2013年8月16日

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