本書で描かれるノモンハン事件とは昭和14(1939)年5月から9月にかけて、満州西北部の国境付近で、当時ソ連の実効支配化にあった外蒙(モンゴル)と日本との国境紛争の事である。日本側が国境線と考えるハルハ河を渡って、ノモンハン付近に進出した外蒙軍と満州国軍との衝突から、日ソ両軍の戦闘に拡大し、日本側は壊滅的な打撃を受けた。第一線将兵の敢闘にもかかわらず、上級司令部の指揮、指導が拙劣であったため、戦史的にも珍しい死傷率32%という完敗ぶりである。上級司令部とはここでは東京・三宅坂上の参謀本部作戦課と満州国・新京の関東軍作戦課である。この二つの司令部の温度差と行き違いに現場の兵隊が振り回されるのである。イケイケの関東軍と関東軍を本来指揮統制すべき三宅坂上が微妙に関東軍に遠慮し慮ったために優柔不断な命令しか出せず、無能な指揮官を更迭せずやりたいように放置してしまった。そしてソ連軍の軍事力を過小評価し、自分たちのそれを過大評価した結果起こる悲劇である。過去に日露戦争をなんとか勝利で終えたとき、日本人は不思議なくらいリアリズムを失ってしまった。要らざる精神主義の謳歌と強要。航空戦力や機械化戦力に大きな期待を持たず、白兵による奇襲先制を極度に重視し、積極主義の心構えを強制する。突撃戦法による先手必勝の信念を鼓吹したのである。それらの精神論は極論すれば全て兵器の性能と物量の不足をカバーするためにとくに強調されたものである。詳細→
https://takeshi3017.chu.jp/file10/naiyou27608.html
- 感想投稿日 : 2023年12月13日
- 読了日 : 2023年12月11日
- 本棚登録日 : 2023年12月13日
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