幽霊男 金田一耕助ファイル10 (角川文庫 よ 5-10 金田一耕助ファイル 10)

著者 :
  • KADOKAWA (1974年5月23日発売)
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昭和29年に『講談倶楽部』誌に連載された猟奇的な通俗スリラーである。同年に映画化もされている。ヌードモデルの派遣業・共栄美術倶楽部の事務所に不気味な異相の人物「佐川幽霊男(ゆれお)」がモデル派遣の依頼に訪れる。彼は所属モデル・恵子を指名するが、翌日に指定された場所を訪問したモデルは刺殺死体となって発見される。その後も幽霊男は次々とモデルを殺害していき、東京は恐怖のどん底に落ちていく。

横溝作品には戦後の都会の退廃や倒錯的な性を描いたもの、そして田舎の因習や血縁の因縁を軸とした本格推理の二つの系統がある。本作は典型的な前者にあたる。横溝はこの二系統を掲載誌によって使い分けていたようだ。一般小説雑誌では論理構成を重んじる本格推理は受けないとして、本作のような猟奇性、怪奇性、エログロ、荒唐無稽さに富んだ作品を書いていた。ただ正統的横溝ファンからは受けは良くない。

本作はヌードモデルにストリッパー、猟奇クラブを主催する三人の蕩児、実物同様の作品を制作できる人形師らが登場し、謎の怪人が残虐非道な殺人を繰り返すという、乱歩風味にエロ要素を加えたような作品。漫画的ではあるが、それなりにおもしろく読める。金田一は場面場面で登場するが、幽霊男に出し抜かれすぎではなかろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 探偵/警察小説
感想投稿日 : 2023年10月10日
読了日 : -
本棚登録日 : 2014年2月8日

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