Tue, 10 Jul 2007
ヤコブ・フォン・ユクスキュルという1930年代くらいの生物学者が
生物記号論というものを考えました.
生物学の一つの方向性として,「生物にとっての世界」というものを考えようという話です.
博物的な生物学といわれれば,そうなんですが,
現代の分子生物学の「解体」の立場とは,大分ちがう進み方ですね.
ダニにとっての世界とはどんなか?
猫にとっての世界とはどんなか?
意外と,面白い発見があって,楽しいのです.
生態学と共通したものをもっているんですが,ものの見方は人間の現象学などとも
通じるセンスがあり,動物の認識を考えることで,人間の認識についても相対的な視点で
再評価しようという意味もあったのだとおもいます.
こういう見方をすると,ほんとに,生物にとっての世界の中で
物理的には近接した領域に住んでいても,「まるで関係ない」種同士が直交した世界の中で
いきていくという,生態学の一つの姿が見えてくるし,進化の中の多様性を理解する上でも
なんとなく豊かな視点に気付かせてくれる気がします.
本著者の日高氏はユクスキュルの
生物から見た世界 (岩波文庫)
を訳出された方で,
その人が,自著でもいろいろ書いておられるのを知り,ちょっと読んでみました.
まあ,「生物から見た世界」の焼き直しといったところですが,
後半にかけては,ユクスキュルの環世界概念を,勝手に<文化依存の物の見方>とか
「人によって視点て違うよね~」という,非常にザクッとした話におとしこんでしまっていて,
なんか,議論のエキサイティングさが醒めてしまう観がありました.
- 感想投稿日 : 2014年12月31日
- 読了日 : 2007年7月10日
- 本棚登録日 : 2014年12月31日
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