99のなみだ: 涙がこころを癒す短篇小説集 (Linda BOOKS!)

制作 : リンダブックス編集部 
  • アース・スターエンターテイメント (2008年4月1日発売)
3.39
  • (32)
  • (67)
  • (124)
  • (25)
  • (4)
本棚登録 : 775
感想 : 79

99のなみだ、という本を勧めていただいたのだがこのタイトルの本がシリーズ物でまた別にあり、どれを読めばいいか少し悩んだ。とりあえず一冊で完結しているこちらを読んだ。
一話完結の本当に短い短編が集められているのだが、とても美しく、そして胸を優しくえぐるような感性の鋭いエピソードも入っており、正直を言うと私にとっては読み進めるのがかなり辛い部分もあった。登場人物は若い女性であることが多く、感情移入しすぎてしまった。そしてこれも傾向として挙げられるが父親と娘という関係にフォーカスした話が多く、ここが最も自分としては辛い部分だった。不器用ながらも娘を愛する父親との、本当に一般的な、そして涙せずにはいられないストーリーは個人的事情でわたしには体験できないものなので、悲しい、羨ましいが半々でこみ上げてしまった。でもその点で言えば、私はこの本が伝えてくれるものの尊さを最もかんじられる読者の1人でもあったと思う。
珍しく男性が主人公だったという意味では、「会いたい」はかなりお気に入りの話になった。ここでは妻と夫という他の話とは一味違う関係が題材になっていて、やはり父と娘というテーマはちらついたけれども、蛍のはかなくて優しい光が導いてくれる展開にグッときた。あと最後に入っていた初恋の話は、ある程度の長さの小説に延ばしてもすごく面白そうな話だなと思った。ああいう「淡々と変」な恋愛ストーリーが私は本当に好きだ。
この歳になったからだと思うけど、ただ涙するだけではなくて、自分の中にある人生経験に応じてその深みを増していく短編ばかりだと思う。これは例えば結婚したあと、子供ができたあと、など、人生のステップごとに読むとまた違った感じ方ができるかもしれない。
(お勧めしてくださった方、本当にありがとうございました!)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年9月3日
読了日 : 2020年9月3日
本棚登録日 : 2020年9月3日

みんなの感想をみる

ツイートする