『キッチン』『キッチン2』『ムーンライト・シャドウ』の三作品が収録されているが、どれもが誰にでも平等に起こり得る等身大の不幸に直面した男女のお話。
ほんの少しのSF要素も含みつつ、死という非日常を体験した登場人物たちがそれに折り合いをつけていく様子は、人間の弱さと強さを同時に感じさせる。
彼らの繊細な心境は美しく、それでいてどこかやわらくに描かれており、非常に上質な読書体験を味わえた。
読み終え本と同時に目を閉じると、表題作にも登場した、月に照らされてしんと静まり返った夜のキッチンが浮かび上がってくる。普段料理をしない私も、その匂いを感じ、心がじんと熱くなった。
いつか大切な人のことを想い、月の美しさにため息を吐くような体験をしてみたいと思わせてくれた作品だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
KADOKAWA
- 感想投稿日 : 2024年2月18日
- 読了日 : 2024年2月18日
- 本棚登録日 : 2024年2月18日
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