米澤穂信氏の描く、青春SFミステリ小説。
自分の住む環境とは似て非なるパラレルワールドへと迷い込んだ高校生・嵯峨野リョウ。彼が訪れた世界には、リョウが生きていた世界には存在しなかった姉・嵯峨野サキの姿があった。
リョウの世界とサキの世界。二つの世界の相違から見出した真実には、哀しい結末が待っていた。
自分の存在した世界と、自分が存在しなかった世界。その二つの違いを比較しなければいけないのは、読者目線でもゾッとするような体験だった。
軽快に進んでいくストーリーとは裏腹に、読み進めるほど、その残酷な展開に胸が苦しくなる。村上貴史氏の解説から一言借りるのであれば、まさに『なんと容赦なく主人公の痛々しさを暴いたことか』。
ラストの畳み掛けるように襲い来る絶望感含め、メンタルに亀裂が入っているときに読む作品ではないなと感じた反面、自分がいたことで誰かが救われるように、せめて『ボトルネック』にならないように、今よりも少しだけ必死に生きてみようと考えさせられた作品だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
新潮社
- 感想投稿日 : 2024年1月17日
- 読了日 : 2024年1月17日
- 本棚登録日 : 2024年1月17日
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