職業としての小説家 (Switch library)

著者 :
  • スイッチパブリッシング (2015年9月10日発売)
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本棚登録 : 2805
感想 : 377

家のあちこちに本を配置し、隙間時間のながら読み愛好家の自分だが、なんとなくこの本はトイレ前に立てかけた。
表紙の村上さんがトイレの門番みたいで、前にも書いたけど、自分の村上春樹さんのイメージは安西水丸さんのイラストで固定されてしまっているから、めっちゃ似てるわ。と毎度ニヤニヤしながら便座で本を開く。

村上さんの個人的な小説家の在り方、創作のルーティン、文壇や賞への態度だったり。
小説を漫然と読んでいる自分からすると、普段意識していない人称の問題だったり、テキストの役目(読者に咀嚼されることで、読者の手にわたる前に著者によって捌かれてしまったらテキストとしての意味や有効性が大幅に損なわれてしまう)とかアー確かに言われてみれば、と読書の視点が立体的に変わる。

意外だったのは、小説として世に出すまでに何度も推敲を重ねていると書いてあった点だ。
筆致が軽やかで柔らかなので、一筆書きではないけれど、すらすらと書き進めている印象があった。それは逆で職人的な凄さ、トンカチで何度も叩いている、具体的な回数にも及んでいた。
そういえば太宰もあんな文体だが、何度も書き直しをしていると何かの本で読んだ。軽やかに見えて、工夫を凝らし、読者の心を巧みにつかむのは、練り直して書かれたいうなれば時間をかけて熟成されたものなんだなぁと。
あまりにも自然な技術で見過ごしてしまう小説の凄みをもっと発見することで、読書の楽しみが深まる。それを気づかせてくれた一冊。

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感想投稿日 : 2023年7月23日
本棚登録日 : 2023年7月22日

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