空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫)

制作 : 寮 美千子 
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101352411

作品紹介・あらすじ

受刑者たちが、そっと心の奥にしまっていた葛藤、悔恨、優しさ…。童話作家に導かれ、彼らの閉ざされた思いが「言葉」となって溢れ出た時、奇跡のような詩が生まれた。美しい煉瓦建築の奈良少年刑務所の中で、受刑者が魔法にかかったように変わって行く。彼らは、一度も耕されたことのない荒地だった-「刑務所の教室」で受刑者に寄り添い続ける作家が選んだ、感動の57編。

感想・レビュー・書評

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  • 本屋さんで立ち読みした時、1番最初に紹介されている『くも』の説明文を読んだら、とても悲しくて、優しくて、印象に残ったので購入。

    読んでいくうちに、元々は優しい子だったのに、きっと傷ついてしまったり、上手に心が成長できなかったのかなと考えるようになりました。

    表現豊かな詩や、創造性のある詩が多く、また所々にある説明文や写真が、より刑務所の様子や犯罪の背景を理解しやすく補足していて読みやすい構成だと思いました。

    ----------
    以下は特に印象に残った詩やメモ書き等

    P19の『Bくんの好きな色を2つ聞けてよかった』という意見について。大人でもここまで優しい言葉をかけてあげられる人はめったにいないと思います。

    P27-得意なことが一つあればいい。ほめてもらえれば、自信が持てる。

    P58-消えた赤い糸
    『自分と彼女と 赤い糸で結ばれていたのに
    彼女は自殺してしまった
    何のために?なぜ?
    彼女が嫌いだ でも いまでも好き
    赤い糸は どこへ行ってしまったのか?
    消えたのか?切れたのか?』

    P84-青いイルカの物語
    最後の
    『青色のイルカは 子どもと泳いだ夢を見ながら
    てんごくを泳いでいます』の部分が好き。
    幸せで、少し悲しい詩だと思いました。
    想像力がすごい。

    P92-誕生日
    一部抜粋
    『産んでくれなんて 頼まなかった
    わたしが自分で
    あなたを親に選んで 生まれてきたんだよね』
    の部分を読んで思わず涙が出ました。
    こんな優しい考えをする子が犯罪を犯すなんて思えないなぁ…

    P102-おかあさん?
    一部抜粋
    『いちどでいいから かおをみせてよ おかあさん
    だきしめてよ おかあさん
    いちどでいいから ぼくのなまえを よんでよ
    おかあさん』
    なんて寂しい詩を書くんだろう…

    P134-クリスマス・プレゼント
    一部抜粋
    『サンタさん お願い
    ふとっちょで怒りん坊の へんちくりんなママでいいから ぼくにちょうだい
    世界のどっかに きっとそんなママが余っているでしょう
    そのママをぼくにちょうだい
    そしたら ぼく うんと大事にするよ』
    寂しかったんだなぁ、愛情に飢えていたんだろうなぁと思いました。

    • りまのさん
      EVEさん

      以前、この本の、レビューをしたことがあります。少年事件の、被害者側として、この本を読んで、あまりに辛かったので、レビューを消し...
      EVEさん

      以前、この本の、レビューをしたことがあります。少年事件の、被害者側として、この本を読んで、あまりに辛かったので、レビューを消しました。
      その少年は、生まれた時から知っていて、愛情をこめて接していたつもりが、事件にあったのです。今では、私の関わりのないところで、真面目に、暮していてほしいと、そう思います。
      被害者側から読むと、人間の、弱さ、寂しさ、恐ろしさや狡さ、その奥に、ほの見える、心の純真さ、優しさなど、加害者となった少年の、さまざまな感情を、想像してしまいます。
      書いているうちに、少し思い出して、哀しくなりましたが、もうこれで、被害者意識は終わりにしようと、決意しました。すると、少しラクな気持ちに、なりました。
      ありがとうございました。
      2021/08/27
    • EVEさん
      りまのさん

      コメントをありがとうございます。

      この本は、加害者の少年の立場からの視点なので、私はどうしても加害者に感情移入してしまいまし...
      りまのさん

      コメントをありがとうございます。

      この本は、加害者の少年の立場からの視点なので、私はどうしても加害者に感情移入してしまいました。
      ですが、この子たちのせいで、被害に遭われた方がいるのも事実ですものね。
      完全な『悪』ではないので、被害者の方も少年の周りの人もより苦しむのかな、と思いました。
      刑務所の中で心が正しく成長して、罪を後悔し反省できれば、被害者の方も少しは救われるのでしょうか…

      出来ることなら、被害者はもちろん、この少年たちも幸せになってほしいですし、本当はいい子なのに、周りの環境のせいで心が成長出来ずにいる子が増えないことを願います。
      2021/08/29
    • りまのさん
      EVEさん

      本当に そう思います。
      ありがとうございます。

      本当は、私達の被害は、大したものでは無かったのかも、しれません。私が辛かった...
      EVEさん

      本当に そう思います。
      ありがとうございます。

      本当は、私達の被害は、大したものでは無かったのかも、しれません。私が辛かったのは、愛情をかけていた少年に、嘘を繰り返しつかれ、憎まれていたかもしれない、その事実です。

      でも、今では大人になった かつての少年が、幸せであることを 願います。
      ありがとうございました…。
      2021/08/29
  • 「空が青いから 白をえらんだのです」
     

    詩的な表現に惹かれた。
    奈良少年刑務所 詩集
    とあって、ますます気になって手に取った。


    琴線にふれる作品はたくさんあったけれど、思い出せる範囲で寮さんの本ほど涙した一冊はなかった。



    「おかあさん?」
    という詩には胸が苦しくなった。



    読む手が止まってしまったとき、母から「あふれでたのはやさしさだった」を先に読んでみたらといわれ読んでみた。詳しく書いてあったので、詩が生まれるまでの背景がよく分かり本書より先に読めて良かった。


    タイトルの詩を書いた彼は、
    薬物中毒の後遺症がありろれつが十分にまわらず、頭には父親から金属バットで殴られた痛々しい傷跡が残っていた。虐待され、親から否定され、自分に自信を持てなくていつも下を向いていたと書かれていた。

    そんな彼が書いた詩が、

    「空が青いから 白をえらんだのです」
     


    おかあさんのことを思って、おかあさんの気持ちになって書いた詩だと彼は言った。
     

    身体が弱いのに、父親から暴力を受けて亡くなってしまった母。

    「つらくなったら、空を見てね。わたしはきっと、そこにいるから」と、亡くなる前に言ったおかあさんのことを思って書いた詩。

    そんな思いがあったと知ったとき、涙が止まらなかった。


    他にもか弱い魂の叫びのような思いが込められた作品がいくつもある。


    心の中に眠っていた思いを、詩にすることではじめて気付いた自分の気持ち。
    本当は悲しかったんだ、愛されたかったんだ、もっと良い子でいたかったんだ…

    相手の気持ちを分からず犯罪を犯してしまった彼らは、相手どころか自分の気持ちすら分かっていないことが殆どだそう。


    この一冊が少しでも多くの方の手に渡りますように。そしたら周りが、社会が出所後の彼らをもう少し優しい目で見てくれるような気がしました。


    寮さんが、出所後世間からの間違った差別や偏見から少しでも守られるようにと願いを込めて書いた一冊。


    読後、
    詩の教室で出会った生徒たちへ、この詩を書いた時のことを、溢れ出た優しさやを、そして一緒に思いを分かち合った仲間たちのことを、いつまでも忘れないでいて欲しい。そんな寮さんからの応援メッセージがこもった贈物であり、彼らにとって生涯忘れられない宝物のような一冊になるような気がしました。


    怖がってもいい。けれど、何もされてないのに毛嫌いしたり、避けたり、手を貸さなかったり、そういった心ないことはしないようにしよう、そう自分のなかで誓いました。


    この作品を手にとられた方、まだ読まれてないかたには是非「あふれだしたのは、やさしさだった」の方を先に読んでいただきたいです。もっとこの一冊を感じれると思います。

  • 奈良少年刑務所。受刑者の中で、特に情緒や行動に難しさを抱えていた10人ほどの少年達を対象に行われた更生プログラムの授業がある。月に一回、詩の朗読と創作を行い、発表しあうというもの。

    この本は、授業の中で生みだされたたくさんの詩と、その背景を補足するように書かれた少しの解説が載っている。

    ただそれだけなのに、読み終わった時の気持ちは、一本の映画を見終わったような感覚になった。哀しさと希望と愛が入り混じったような、複雑だけど爽やかで温かい気持ち。

    受刑者の少年達の詩がもつ透明感と、彼らを見守る筆者の温かな愛情。そして、授業を受けた少年達の心と行動の驚くべき変化。彼らは一度も耕されることの無かった畑のようなもの、と筆者は述べているが、本当にそうなのだろうと思わされた。

    この授業のような素晴らしい更生プログラムが行われていること、そしてそれを作り上げている心温かで正しい大人たちがいることが本当に素晴らしいと思った。

    そして、このような機会は刑務所の中だけでなく、初等教育やまた、逆に社会人になった後でも、心に傷を負った人たちに広く与えられるべきものだと思った。

    授業の内容を丁寧に記載したドキュメンタリー本の「あふれでたのはやさしさだった」も是非。

  • 奈良少年刑務所詩集を読んで…
    病院の待合室で、少年たちの詩と、寮さんのコメントを読んでたら…涙が止まらなくなりました…
    犯した罪の重さと、内面の素朴さの落差よ…!
    少年たちの詩からは、「かっこつけよう」、とか、「うまく書こう」という気持ちは微塵も感じられません。だからこの詩集は人をひきつけるのかもしれません。
    塀の内と外は紙一重。読む人によって、価値観ががらりと変わる可能性を持つ詩集です。「犯罪者と自分は関係ない」と思う人にも読んでもらいたいな…。

    詩集の中から、ひとつ、引用します


    二人のお母さん

    「必ず迎えにくるから」と言われ
    五歳のとき 施設に預けられた
    六歳の誕生日に お母さんからカードが届いた
    七歳の誕生日も お母さんからカードが届いた
    八歳の誕生日も お母さんからカードが届いた

    「お誕生日 おめでとう」
    手書きのカードが 何よりうれしかった
    一年に一度の楽しみだった
    十歳の誕生日 カードは届かなかった
    次の年も その次の年も
    わたしはひとり 部屋で泣いた
    ずっとずっと 泣いていた

    すると 先生が来て
    無視するわたしを 抱きしめてくれた
    やさしい声で こういってくれた
    「わたしは ここにいるよ
    ずっとずっと ここにいるよ
    どこへも 行かないから
    ずっとずっと 守ってあげるから
    だから 泣かないで
    わたしが お母さんになってあげるから


    二十四歳になったいまでも わたしのお母さんは二人
    一人のお母さんとは 十九年 会えてないけど
    お母さんは二人
    いつまでも いつまでも 二人

  • この本は奈良少年刑務所の受刑者たちが紡いだ詩を集めた本。
    被害者がいるから加害者がいることを考えると複雑な思いも込み上げるが、彼らの真っ直ぐな言葉を読むと胸を打たれる。
    特に母について書かれた詩を読んで涙が止まらなくなった。
    母親の愛情を十分に受けなかった、期待されすぎた、様々な事情があるにせよ彼らの母への思いは強い。
    母親としての責任の重さを改めて思い知らされた。

    どんなにパパが優しくてもどんなに私が怖くてもママっ子の我が息子。
    理屈じゃないんだなと思う。
    母親って特別な存在なんだ、特に男の子にとって。
    毎朝保育園に送っていく途中で「ママ、早くお迎えに来てね」という息子。
    どうしてと尋ねると決まって「だってママ大好きだもん」と。

    いつまでその小さな手をつないでくれるかわからないけれど、悔いのないよう愛をいっぱいいっぱい息子にも注いであげたい、そんな気持ちになった。
    出来るだけ早く早くお迎えに行ってあげないと。

    • まろんさん
      vilureefさん、こんにちは!

      書評を見たときから気になってる本です。
      タイトルが素敵だなぁ、と思ったら、少年刑務所にいる少年たちが書...
      vilureefさん、こんにちは!

      書評を見たときから気になってる本です。
      タイトルが素敵だなぁ、と思ったら、少年刑務所にいる少年たちが書いた詩集とのことで
      罪を犯してしまった子の心にも、こんな美しい言葉が眠っていたんだなぁ、
      罪を犯す前に、その言葉を外に出してあげられていたら、と心が痛みました。

      vilureefさんの息子さんがママのことが大好きなのって
      レビューやコメントを拝見していると、ものすごく納得できてしまいます。
      溢れるような愛情にいつも包まれている息子さん、幸せですね♪
      今日は日曜日だけれど、明日からまた、できるだけ早くお迎えに行ってあげてくださいね(*'-')フフ♪
      2013/04/07
    • vilureefさん
      まろんさん、こんにちは!

      とてもいい詩集でした。
      この本てもう数年前に出版されていたのですね・・・。全然知りませんでした。
      ブクロ...
      まろんさん、こんにちは!

      とてもいい詩集でした。
      この本てもう数年前に出版されていたのですね・・・。全然知りませんでした。
      ブクログのレビューを見て初めてしりました!
      ブクログって良いですよね。

      子育てに関しては割と放置プレーです(^_^;)
      たまにはちゃんと向かい合わないとと思います・・・。
      今日は帰ったらモンスターボールでポケモンごっこをやる予定です(笑)
      2013/04/08
    • だいさん
      >どんなにパパが優しくてもどんなに私が怖くてもママっ子の我が息子。
      理屈じゃないんだなと思う。

      御意!
      特に男の子というのもうなず...
      >どんなにパパが優しくてもどんなに私が怖くてもママっ子の我が息子。
      理屈じゃないんだなと思う。

      御意!
      特に男の子というのもうなずけますが、「慈愛」ですからね。大きな愛には、理由なんかいらないと思いました。
      2013/05/16
  • もちろん法を破ったからこそ少年刑務所に身を置いているわけだけれど、ここには書かれていない事情や生育環境がそれぞれにあったのだろうと察せられて複雑な気持ちになる。詩というよりは思いの丈が拙くも書かれている。乾ききった心に本当に必要なものは丁寧に向き合い惜しみない愛情を注いでくれる誰かなんだと思う。

  • まず、純粋な「詩」として心を鷲掴みにされました。
    こんな無防備な、純粋な、ストレートな言葉たち。
    ほとんどの受刑者がかなり複雑で苦しく、厳しい背景を持つようですが、幼い子供が書いたようなものもあれば、中には文学や哲学に造詣が深いのでは、と思わせる詩もありました。
    どのようなスタイルにしても作品として素晴らしいものばかりでした。
    ほとんど初めから最後までボロボロと涙を流しながら読みました。
    プログラムでは誰も仲間を否定せず、辛抱強く発表者の言葉が出るまで待ち、ひとつでも多くその子の、その作品の良いところをみつけようとし、褒めたたえ、励ましあい、認められることで自らも相手を見つめようとする素晴らしい循環。
    また、子らの母への思いには、悲痛なものを感じました。

    この「社会性涵養プログラム」に参加した受刑者たちは、薬物依存者や強盗、殺人、レイプなどの重罪で刑を受けている人もいるとのこと。
    そこに被害者、被害者の家族が居ることを思えば安易な言葉を記せないけれど、刑務所で生まれて初めてこころの扉が開いた日から、ほんとうの意味での反省と償いの日々が始まること、生涯償うということ、刑務所の門を出た後に、生涯、薬物や悪い仲間の誘惑や孤独や世間の厳しさに耐え、ここでの仲間や先生との出会いを忘れず、しっかりと更生の道を歩んでくれたらと願わずにはいられません。

  •  生まれ落ちた場所によって過酷な運命を背負う魂もある。
     私は、この建物に恋をした。
    どんなドラマがここで、展開されたのかは知らない。
     ホテルとして改装されるけれど、少年達の想い、覚えておきたい。
     「もりのあさがお」っていう刑務官を描いた漫画も良かったな。

  • 奈良少年刑務所の少年受刑者達の作品集。

    編者である童話作家の寮美千子さんが、「社会性涵養プログラム」の一環を依頼され、手探りながら、彼らに寄り添い、刑務所内で「物語の教室」を担当している。硬く閉ざされた心を耕し、水を与え続ける。それが、地下水となるまで。(これを涵養というそうだ。)その中で生まれた、まっすぐで、心を抉る様な、詩集。

    母親についての詩には、涙を我慢できない。「クリスマス・プレゼント」は、特に印象的だった。

    少年犯罪が、凶悪化していくニュースなどを見ると、少年法は現況に見合っているのだろうかと思っていた。ましてや、自分や家族が被害者であった時、未成年ということで、許せるだろうかという事は、誰しも考えているのではないでしょうか。

    寮美千子さんも、講師を引き受けるまでの葛藤を、正直に綴っていた。しかし、受刑者には、育児放棄、学校での落ちこぼれ、福祉の手が届かなかった子らが多いという。その家庭を、学校システムの欠陥を、行政の過失を許している社会は、彼らへの加害者となっていると気がつく。

    寮美千子さんの授業は、大きな成果をあげている。今も福祉の隙間にいる子供達の為、学校教育にこのプログラムを導入して欲しい。消えない罪を犯す前に。

  • 寮さんの解説や実際の「物語の教室」の風景、少年青年たちのつむいだ詩、すべてに胸がつまりそうだった。
    恥ずかしい話、わたしにはきっと、おかあさんうんでくれてありがとうなんて、詩にこめて心から思いつむぐことはできない。彼らは確かに犯罪者だが、つむがれた詩は尊いと感じたし、もっと社会があたたかだったらと思わずにはいられない。
    社会性涵養プログラム、その場の大切さ、いいことを知りました。

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