ハンナ・アーレントの代表的研究書。未公刊資料なども駆使しながら、全体主義との対決がアーレントの思想の基調をなすと主張する。そのため、『全体主義の起原』の解釈に始まり、その中でアーレントがマルクス主義の問題に着目したこと、それが『人間の条件』における労働の考察に結実していることが示される。さらに、『人間の条件』における活動論に始まる彼女の思考が、留保がつくとはいえ、古典的共和主義の系譜に連なっていること、しかしその中で哲学と政治の相性の悪さについて思考を深めていったこと、が時系列的に明らかにされている。アーレントの考察は多岐にわたるため、なかなか基本線がどこにあるのかがわかりにくいが、この研究はその点を明示してくれているという点で、非常に有益である。また同時に、アーレントの試行錯誤の過程が克明に描かれており、彼女の思考を理解するうえでの困難さも感じさせてくれる。
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- 感想投稿日 : 2016年4月17日
- 読了日 : 2016年4月17日
- 本棚登録日 : 2016年4月17日
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