白鯨との闘い ブルーレイ&DVDセット(2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]

監督 : ロン・ハワード 
出演 : クリス・ヘムズワース  ベンジャミン・ウォーカー  キリアン・マーフィー  ベン・ウィショー  トム・ホランド  ブレンダン・グリーソン 
  • ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
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IN THE HEART OF THE SEA
(白鯨との闘い)
ワーナー・ブラザーズ・ホームエンターテイメント 2015年

 今年1月に3D映画で公開された”白鯨の闘い”が、ブルーレイBDとDVDのセットで販売になった。この映画は1850年に出版されたハーマン・メルヴィル作”白鯨”の映画化ではなく、小説”白鯨”のネタ話である。映画はナサニエル・フィルブリックのドキュメント”復讐する海、捕鯨船エセックス号の悲劇”(和訳版は集英社から2003年に発売された)を基にして、海と白鯨との闘いを描いたヒューマンドラマである。
 話は1820年アメリカが捕鯨大国の時代、捕鯨船にキャビンボーイとして乗船し生き残った少年が30年後に老人となり、訪れた作家ハーマン・メルヴィルに語るものである。語り部役の老人はボトルシップ作りと酒浸りの生活で夫人はホテル経営が火の車状態の時、メルヴィルは全財産を払って老人から捕鯨船の惨事を聞く努力をするが、老人は悲惨な経験を語ろうとしない。夫人は家計の事情から老人を説得して、顛末が語られていく。
 帆船映画にはお馴染みの船内の軋轢、嵐の海および白鯨との闘いが最近のCG技術を駆使してリアルに描かれている。空と海の画面は実に美しく、全体的に臨場感があり海にいる気分になる。主人公は一等航海士で、出港時から経験が乏しくコネでなった船長との軋轢が続く。船長は嵐の中でメインヤードのスタンスルセイル展帆を指示し、沈没寸前になるが一等航海士の機転で転覆を回避する。船長はその時の船の損傷を一等航海士の責任と追求する卑劣漢で、つい一等航海士に感情移入してしまう。
 鯨を見つけてのボート漕ぎと銛(もり)打ちも臨場感がたっぷり。鯨の鰭(ひれ)でボートのクリンカー張りが破損すると銅板でバチ当て補修する。マッコウクジラの頭部にある油は良質なため頭部に穴を開けて取り出す、深くなるとボーイを体内に潜らせて取り出す。体内の臭気がすさまじいのでボーイにロープの切れ端を咥えさせて潜らせる。そのほか鯨肉の釜揚げなど捕鯨のデティール描写が丁寧である。
 大西洋の鯨が捕鯨で枯渇した時、一等航海士はパブで太平洋の鯨の群れと怪物の存在を聞いてホーン岬を回って太平洋に繰り出していく。ここから白鯨との闘いが始まる。
 銛を打ち込まれた白鯨はエセックス号に反撃し、船は釜の火が燃え移り沈没する。乗組員は3隻のボートで陸地を目指すが、嵐に遭遇し漂流するうちに食料がなくなる。死者が出ると聖書の言葉を引用して肉を食べる。近年アンデス山中で航空機が遭難したとき死者を食べて助かった事例と同じである。その肉がなくなると死者のくじ引きが始まる。ベトナム戦争映画”ディア・ハンター”のロシアンルーレットを思い出すやるせない場面である。老人はこれらが話したくない事柄で、メルヴィルの取材を拒否した原因である。
 さらに白鯨は漂流するボートを追ってくる。一等航海士は宿敵白鯨に銛を打つ気構えの時、白鯨と目が合い銛打ちを止め白鯨も静かに去って行く。感激的なシーンである。
 長い漂流の後ペルー沖の島に着きアメリカに戻ると、捕鯨船オーナー達は白鯨による沈没を隠して座礁したことにして捕鯨業界を守ろうと画策するが、一等航海士も船長も嘘の証言を拒否する。

 老人はメルヴィルに全てを話した後、ペンシルバニアで土の中から油が出た話を信じられないとつぶやく。捕鯨時代の終わりを象徴する言葉で、この映画は反捕鯨映画ではないかとも感じる。帆船ファンにはたまらない必見の映画である。
 ハーマン・メルヴィルは小説”MOBY-DICK(白鯨)”で一等航海士をエイハブ船長のモデルにし、白鯨を左足喪失の宿敵として追いかけ回すストーリーに仕立てた。ジョン・ヒューストン監督、船長をグレゴリー・ペックが演じた。(安藤雅浩)

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 映画・DVD
感想投稿日 : 2016年9月11日
本棚登録日 : 2016年9月11日

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