「父を山に棄てに行く」
生きていくために。
どれだけ人里離れて頻繁に会いに来れない場所だったとしても、平穏を手に入れるには必要なことだったのだろうな。
「インフルエンザの左岸から」
二人で見送った人。
管理しているお寺の言い分も分からなくはないが、それを知っているにも関わらず葬式に関与しないのはどうなのか。
「猫降る曇天」
届けたかった物資。
真実を話したところで子供が拒絶反応を示している限り、誰も信用してくれないだろうし不振者と通報されるだろう。
「すみなれたからだで」
失う物と得る物は。
年齢を重ねるに連れて若い頃のようにとはいかないだろうが、あまりにも何もないと寂しいと感じるかもしれない。
「バイタルサイン」
大胆な行動により。
明らかに慣れた様子で交わり合う二人を見た時の衝撃は、仕事に夢中になっていた事など忘れるほどの怒りだったろ。
「銀紙色のアンタレス」
好きになった相手。
話しかけなかったのではなく何と言えばいいか分からず、頑張って粧し込んでも反応が薄ければ悲しかっただろうな。
「朧月夜のスーヴェニア」
愛されていた記憶。
大切に育て許嫁を持つ娘が見知らぬ男となど知った瞬間に両親は絶望しただろうが、待つだけの身も辛かっただろう。
「猫と春」
一匹と一人と共に。
一緒に暮らしている理由もだけれど、ほとんど会わない生活をするぐらいなら厳しいとはいえ互いに独立すべきだろ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
窪美澄
- 感想投稿日 : 2024年3月29日
- 読了日 : 2024年3月29日
- 本棚登録日 : 2024年3月29日
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