迷路荘の惨劇 金田一耕助ファイル 8 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (1976年6月7日発売)
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感想 : 66
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金田一耕助シリーズ。過去に横恋慕の末、妻を殺害、間男の左腕を切り落とし、自ら命を絶った古館伯爵。その建物を手に入れた男が、建物に縁のあった人たちを集めて、ホテルとしてのオープンを祝うはずだった。縁やいわくのある、一癖も二癖もある連中が集まったことで、当然のごとく起こる殺人事件…。

うわ、5月半ばだというのにまだ1冊目か。休みが長かったとはいえ、結構読むのに時間がかかったものだ。

紹介するなら「いつもの金田一」である。登場人物の全て、怪しく活躍する老刑事を含め、すべての人間が怪しい。で、金田一が目を離したすきに、一人また一人と殺人が起こってしまう。また、迷路荘というタイトルは、地下道に鍾乳洞が縦横無尽と走っている建物であり、最初に紹介された「どんでん返しなどのある」というのは、結構あっさりと否定されてしまう。

横溝正史は、洞窟や鍾乳洞が非常にお好みのようで、建物内の描写は相当投げやりなくせに、洞窟となると嬉々として筆が進む(読みやすい)のであるが、一方でディテイルは適当なもんで、まったく風景が想像できない。

また、その洞窟も、毎度ながら使い捨てという風合いが強く、すぐに補強したレンガは崩れてしまうし、よくもまあ、その上に立っている家が大丈夫なもんだと感心する。何度も繰り返されるレンガの崩落は、今回一番気が散るシーンである。

事件の真相については、あんまり本気で犯人を探そうとすると、完全に肩透かしを食うので、軽く流して読むのが正しいのであろう。

ボリュームもあり、事件と事件の間の時間の割に、ああでもないこうでもないと時間稼ぎが多い印象で、内容の割に読むのに時間がかかり、印象もうすいという作品である。

まあ、金田一シリーズの代表的な立地、トリック、残忍性などを含む作品としては、人気があるのも解らなくもないが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ
感想投稿日 : 2020年5月13日
読了日 : 2020年5月13日
本棚登録日 : 2020年5月13日

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