明治~昭和の大戦中までの、東京周辺の貧困層の生活と、娼婦や女工の経済的および社会的な立場というものを、過去の文献から解説する論文。
東京墨田区あたりの長屋もしくは木賃宿に住む労働者は、風呂にも入れない劣悪な生活をしていたことを、新聞社の記者が変装してレポートする。また、私娼や紡績工場の経営者はヤクザまがいの立ち回りをして、女性たちを逃げられない様がんじがらめにした挙句、ボロ雑巾のように利益を吸い上げていく。
新潮45という、悪趣味な雑誌に載せていたレポート記事だけあり、残飯をすするような嫌悪感を抱かざるをえない表現がたくさん出てくる。しかし、単なる一次的なインタビューや、過去の論文の丸写しだけでないのは、なかなか読み応えがある。
特に、後半の描き下ろしと思われる子売り子殺し、娼婦、女工の項については、引用が多すぎるきらいがあったが、一読の価値がある。
ネットが発達し、法律も整備された現在ではそんなことはなかろうと思いたい反面、いまだに風俗と名を変えた商売が成り立っているわけで、裏社会ではこういうものが残っているのではないかということは、想像に難くない。
一方で、近年NHKなどで繰返しドラマ化などされる、戦前の下町の、のどかで人情味と生活感のある明るい生活の嘘くささを感じざるを得ない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ドキュメンタリー
- 感想投稿日 : 2017年12月1日
- 読了日 : 2017年11月30日
- 本棚登録日 : 2017年12月1日
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