例えば、夏の日の突然の夕立。激しい雨の中から、ふわりと抜け出したことがあります。振り返ればどんより雨雲が広がっています。でも、今わたしは晴れた空の下に。見慣れたはずのいつもの街並み。アスファルトの道路。なのに、こっちとあっちで別々の世界になったような、そんな違う空気に包まれたような不思議な感覚を覚えました。
谷津のあっちの世界は、混沌とした葦原の中つ國のようなイメージがわたしの中では広がります。まだ何モノでもなくて、善も悪も光も陰も全てのモノが混じり合ったような。そんな世界に跳ぶことは、ある人にとっては不気味だったり不安になったりするだろうし、でも、ある人にとっては自分をがんじがらめにしていたしがらみから解放されたような気持ち良さを与えてくれるんだと思います。
「ここは自分の場所じゃない」なんて思ったことがあります。実はこっちが夢の中で、わたしは覚めない夢の中で無意味に時を刻んでいるだけなんて。
自分じゃない自分になる。望んでなる人もいれば、その方法しかない人もいるんじゃないでしょうか。逆に全く必要のない人もいるでしょう。でも、それを選ぶのは自分であって、あっちの世界に足を踏み入れること、それは間違いではないのかもしれません。きっかけを与えるものは噂だったり、ゼツボウだったり、そういうものだとしても、みんな何らかの期待や祈りや好奇心や残虐性やらいろんなものが心の奥底に眠っていて、実は目覚める時を望んでいたのかもしれません。ただ、待ってる人がいるということを忘れずにいてほしいです。
今も谷津はうつらうつらとしながら、覚めない夢の中にいるのでしょう。
- 感想投稿日 : 2017年9月28日
- 読了日 : 2017年9月28日
- 本棚登録日 : 2017年9月28日
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