何年も前に挫折した物語。
読むのが苦しくて怖かったから。
数々の裏切りに胸が張り裂けそうになり、孤独な戦いに息苦しくなったから。
でも、みなさんのレビューを読んでみたら、上巻はしんどいけど頑張って下巻まで読んで欲しいとの感想がたくさん。そこで、もう一度読んでみることにした。
今回は、ちゃんと最後まで読めたし、この世界観にどっぷりはまり込むことが出来た。
突然自分のいる世界が180度変わってしまった陽子。そこでは生き抜くためには剣を振るわなければならない。妖魔とはいえ自分の手で相手を殺す。時には人間に剣を向けなければならない時もある。辛い旅の途中、出会った人々の優しさに涙が溢れることもあるけれど、その涙はすぐに裏切りという絶望への涙へと変わることになる。ついには、本当の優しさを与えてくれた(かもしれない)人からも、自分から距離を置く。
「絶望」と「死」がいつも陽子にべったりと張り付いているようだった。それでも、陽子は生き抜くことを自ら選び取る。
元いた世界での陽子と、地図にない国、巧国での陽子。ただ漠然と生きているだけだった世界と、自らの手を血で汚しながら生き抜くことにしがみつく世界。
帰りたいと願う世界には、陽子のことを本当に心配して待っていてくれるものはいなかった。だからといって、今いる世界では孤独と裏切り、ひもじさや怪我の痛みで立ち上がることも出来ない。
なんて酷い試練が陽子に降りかかっているのだろう。なんで陽子だったのだろう。
これでもかというほどに、陽子に絶望を与える、この意味は何なのだろう。
冷たい雨の中、涙も涸れたまま倒れ込んでいる陽子にとって、この夜が与えてくれるものがゆるやかな死となってほしくはない。
でも、この先に全然光が見えずに上巻が終わってしまった。
どこに帰るつもりだったのだろう。
- 感想投稿日 : 2018年8月18日
- 読了日 : 2018年8月18日
- 本棚登録日 : 2018年8月18日
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