双頭の悪魔 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M あ 2-3)

著者 :
  • 東京創元社 (1999年4月21日発売)
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感想 : 389
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もうほんまに「カン」で犯人を当てるなんてことは卒業しなアカンで〰️。ほやな、ミステリに対する冒涜やったって、今回はとくと反省したわ。

と、いうのも論理的推理のよるフーダニット(って言葉、初めて使いました……)が、こんなにも美しく華麗なものだったなんて!
『月光ゲーム』『孤島パズル』ときて、シリーズ三作目『双頭の悪魔』で今まで以上に興奮しちゃいました。
江神さんが一旦推理の口火を切ると、オセロゲームの盤を埋め尽くした白い石が、次々と黒い石に反転していく鮮やかさがあります。けれど彼はどんなに推理が鮮やかであろうが、それをひけらかすこともなく、直後犯人だけに告げるのです。そして最後に犯人に見せた慈悲。それは、彼の優しさという単純なものではないはずです。江神さんには何かある、彼が纏う仄暗さが何なのか……その原因となるかもしれない彼の過去が、今回わずかに窺えます。
相当なボリュームがある物語ですが、だれることなく最後まで読めました。と、いうのも奥深い山奥にマリアを探しに行ったEMCメンバーたち。ところが、大雨の影響から橋が濁流に呑まれてしまい、芸術家たちのユートピア木更村の江神、マリアチームと夏森村のアリス、織田、望月チームに分かれてしまうのです。そして、両方の村では殺人事件が。ストーリーはマリア視点とアリス視点で交互に進んでいきます。この二つの村の事件は、全く関係ないのか、それとも何か繋がりがあるのか。読者は、そう考えることが出来ますが、彼らはお互いが殺人事件に巻き込まれてるとは終盤まで知りません。うーん、考えてもわからない私は、どんどん引き込まれていきます。

江神さんの推理展開はさすがですが、面白さで言えばアリスチームの謎解きでした。三人が、こうだ、いやそれではダメだ。じゃあ、これでどうだ。いやいや……と、謎に取り組む姿は自然と応援したくなります。
そして、各々の推理を通じて彼らの人柄が伝わってくるのです。なかでも織田くんの熱いところが新鮮で、ちょっと見る目が変わりました。

また、マリアと江神さんの関係も気になるところじゃないですか。影のある男って何だか惹かれません?マリアも辛い出来事に心が逃げ場を求めていたから、江神さんへと通じるものがあるのかもしれない。マリアは江神さんなら、何とかしてくれるって憧れのような感情を抱いていますよね。そんなマリアに江神さんは、ことあるごとに「アリスが一番心配してる」とかいってるのがね~、何だかね~。マリアに一線引いてるんだろうな~とか。まさかの三角関係?なんて勝手に妄想してしまいましたよ。余計なお世話ですよね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学:著者あ行
感想投稿日 : 2019年10月11日
読了日 : 2019年10月11日
本棚登録日 : 2019年10月11日

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