空色勾玉 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店 (2010年6月4日発売)
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感想 : 349
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先に薄紅天女を見つけてそれを読もうとしたらどうやら三部作ということで、この本から読み始めた。
日本神話をベースにしたものは好み。描写が細かく、私の好きな古代日本ということもあって、とても入り込みやすかった。つい最近まで殺伐した描写のものばかり読んでいたこともあってか、日本の自然を柔らかく表現した描写には何だか懐かしいものがあった。言葉が綺麗で優しい。日本語の、日本にある古来の自然の美しさに触れた気がする。
物語としては稚羽矢が出てきてからがぐっと面白くなった。二つの世界が出てくるけれど、それぞれにそれぞれの美しさがある。だから互いに無いものに惹かれるんだろうな。そちらになれないと分かっていながら。だから切なさが所々にある。
稚羽矢が狭也と出会い、そこから徐々に成長していく過程がすごく好き。狭也が攫われて、自分を顧みずに助けに行きたいと強く願う彼を目の当たりにした時、登場したばかりの時の彼とはもう違うのだと何だかはっとした気がした。主人公の説く自然のあり方や自分のあり方がとても良かった。自然を見て自ずと浮かんでくる感情を言葉したらきっとこれなのだと思った。

照日王は自分の父親と自分の在り方を信じ続けた純粋な人なのだろうし、月代王は輝にいながら闇に憧れ、でも、そうはなれないと覚っている切ない人。
人が亡くなるところは泣きそうなほどに辛い。
それでもハッピーエンドで終わって良かった。あとはあの二人が、その周囲の人々が幸せな未来を歩んだと信じたい。

登場人物では稚羽矢と科戸王、伊吹王、鳥彦が好き。とくに鳥彦が現れると、どんなシリアスな場面でもほっとした。稚羽矢と狭也の掛け合いも好きだった。

本当に綺麗な、面白い話。時間が取れた時にでも次のシリーズも購入して読みたい。読み終えてからふと思い返すと、感動がじわじわと来ていつの間にか本を手に取って好きな場面を読み返している。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2013年4月7日
読了日 : 2013年4月7日
本棚登録日 : 2013年4月7日

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