軽い:ふわふわ、羽毛、風船
美味しい:天国へ登るような
楽しい:遠足に行く小学生のように
痛い:針を刺す、身を切る、胸が張り裂ける
視線:剃刀、刺すような、ハエのように煩わしい、とげ、
寂しい:遠い旅にでも出たような、崖から突き落とされたような、自分のわきに急に空洞でもできたような、石のように重たい、大事なものを抜き取られたような、
吐き気、落ち込み:黒い、粘っこい泥流が身体をぐるぐるとまわる
静か:彫刻のごとく、真空、耳がふさがれた、眠ったように、深い水底、大嵐の後、潮が引く、昼寝、やかましくなっていた目覚まし時計のスイッチを消しでもしたように、ぴたっと、
はっきり:絵に描いたように、手に取るように
黙る:石、岩のように、貝が蓋を、鍵のかかった抽斗
疲労:何か懸案の大仕事を成し遂げた時のような快い疲労、不愉快な疲れではない、つまった下水のようにあふれ出し、関節という関節に、ねっとりタールのように淀みを作り始めた
疲れる:長い長い不愉快な旅の後、漸く自家に帰って来た旅人の疲れる、吸い取られるように消えていく、濡れて重い外套 コート、歩くたびにからだの芯から絞り出されてくるような
過ぎる:夢のように、悪夢のように
驚く:全身に冷水を浴びせられたようにぎょっとした、氷を胸に当てられたようにひやりとする、全身の血管がいっぺんに凍ったような思い、腫れ物にでも触られたように
喜び:気を緩めればすぐにも外にはじけて出そうな、飛び立つような、からだじゅうにしみ込むような、吹きこぼれるような
浮かぶ:目には緊張の色が、失望、焦り
希望:せっかく湧いた希望も泡のように他愛もなくはじけてしまった、梅雨の晴れ間の虹のように消えて、
絶望:心の中にぎざぎざとのこぎりの歯のような音を立てる、満ち潮のように押し寄せる、地底に吸い込まれていくような絶望感、頭をかきむしるような、
失望:風が利用できなくなった帆船のような
無言の返答が、何より真実を雄弁に語る
怒りの渦が水位をあげる
記憶:乱れたビデオの画面のような錯綜した記憶、記憶の数々が電光のように閃く、灰色のもやに包まれているような、大きな消しゴムで記憶の中からゴシゴシ消しとりたい、今でもくっきりと映画の一コマを見るように瞼のうちに浮かぶ、
思い出す:写真にとって残しておいたように
思う:稲妻のように走る、さっと通り雨のように行き過ぎる、夜の雪のように黒く冷たくしんしんと降り積もる、断崖に立たされたような、身を切られるような、飛び立つ
孤独:氷、凍りつくような、穴の中に落ち込むような、離れ小島に押しやられたような、宇宙の闇を見ているような、太陽のように灼く
心:火、水、氷、紙くずを丸めたようにくしゃくしゃ、鉛、
空想:子供の落書き、電波のように広がる、霧のように消える
音楽:子守唄のようになって彼の魂をふわふわと眠りの国へ誘い出してくれる、涼しい風が自分のからだの中を吹きぬけてゆくような、抑えがたい幸福の吐息のように休みなく溢れてくる
落胆:白羽の矢が耳をかすめて逸れたような
消沈:淋しさと焦燥とで風船のようにしぼんでしまう
気:花のしぼむような気の衰え、足許から大地へめり込むように気が沈んでゆく
風:剃刀の刃、身を切る、ナイフ
雲:怪物の影、ふわふわとし綿、逆光を浴びて白いカーテン、ハンカチ、卵の白身のように泡立つ、バラ色の花、魚の鱗、キャベツのような形
現実:現実の冷たさが針のように頭をもたげる、ゼリー ゆがんで実感がなくなる
時間:張り詰めた糸、時間の断片を宝石のように集める、暗い海底のような時間の澱み、滑るように過ぎる、時計の針が止まったよう
- 感想投稿日 : 2011年6月1日
- 読了日 : 2011年7月2日
- 本棚登録日 : 2011年5月30日
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