9歳の主人公・新子をとりまく日常。ただそれだけを淡々と描いた作品。
だけど、その無垢な目を通した世の中の、なんと瑞々しく、時に切なく、そして哀しいことか。子供にしか分からない世界、大人たちが忘れてしまった世界、読み手に郷愁や感傷を抱かせ、胸がちくりと痛む、印象深い作品です。
昭和30年という時代設定が、また絶妙。戦後の世相の激変が、戦争を知らない新子の目によって鮮やかに、あるいは残酷に描き出されています。
自らの幼少期と経験がかぶるわけでも無いのに、何かが呼び起こされる不可思議な一作。コレを大人になってから書ける作者も、ある意味凄いです。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説・ミステリ
- 感想投稿日 : 2016年9月20日
- 読了日 : 2012年7月30日
- 本棚登録日 : 2016年9月20日
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