革命について (ちくま学芸文庫 ア 7-2)

  • 筑摩書房 (1995年6月7日発売)
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感想 : 31
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『人間の条件』の続編と言うか、補遺的な内容。『人間の条件』同様、金言に満ちた本だった。

アメリカ革命とフランス革命を比較し、前者を「成功した革命」、後者を「失敗した革命」と位置付ける。
アーレントは、自由Freedomと解放Liberationを峻厳に区別した上で、革命の目的は、市民が統治に参加する自由Freedomを構成することとした。フランス革命は解放Liberationにこそ成功したものの、真の自由Freedomを構成するには至らなかった。

一般的に「革命」というと、暴力的でドラマティックな側面ばかりが注目されがちだが、アーレントに言わせれば、暴力的局面は革命の第1段階に過ぎない。革命の本質は自由の創設=市民による自治の仕組みをつくることにあるのだから、むしろ暴力的局面が終わってからが革命の本題ということになる。アーレントが、一般的な名称である「アメリカ独立戦争」ではなく、あえて「アメリカ革命」と呼ぶ理由もここにある。

フランス革命の失敗の原因としては、

・民衆の貧困という社会問題の解決が主な目的となってしまったこと
・市民の幸福を国家統治とは無関係な「私的なもの」であるとみなしてしまったこと
・革命後に制定された憲法の正当性が際限なく疑われ、頻繁に改正されたこと
・市民の自由な議論の場であった人民協会を弾圧し、ナショナリズムに基づく中央集権的な政治構造を目指したこと

などが挙げられている。

アメリカ革命の成功の背景としては、

・民衆の貧困という社会問題が存在しなかったこと
・市民の統治参加という「公的幸福」をいかに実現するかに重きをおいたこと
・憲法を制定した「建国の父」たちに最大の敬意が払われ、憲法が尊重されたこと
・連邦制を採用し、草の根(ボトムアップ)的な政治構造を志向したこと

などが挙げられている。

しかし、合衆国憲法は代議制を採用し、結局のところ少数の代表者のみに公的空間を与えることとなり、結果として人民は公的事柄に無関心となり、革命精神は失われてしまった。

政党政治の問題点や、どうすれば憲法が正当性をもつか、といった現代の日本にも通じる論点を本書は提示している。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年7月5日
読了日 : 2015年6月27日
本棚登録日 : 2014年8月17日

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