手のひらの京

著者 :
  • 新潮社 (2016年9月30日発売)
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京都の四季折々の情景の中で、奥沢家の三姉妹(綾香、羽依、凛)、それぞれが悩みながら前に進もうとする姿が描かれいる。
生まれ育った風土は、そこに住む人が意識せずとも影響を与える。京都のような歴史がある土地には独特なものがあるのだろう。
そのことが、三姉妹の心情を追いながら分かる。

三女凜は東京への就職を希望し、京都を出ていこうとする「待たれへん。待ったら、私のなかの大切ななにかが死ね気がする」という強い衝動を持って。
それに対して両親は反対する。
三姉妹が魅力的なのに比べて両親がなんだか…。
父親の定年と同時に、これからは自分の時間を大切にしたいと食事の支度から解放を宣言(それには拍手!)しながら、凜が京都を出ていくことを必死になって止める。さびしくて心配だからと。それが子を思うというのか?
そんな親のことを凜は、本当に私のことを心配してくれいるのだと感謝し申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
子は親を思いやり、優しい。それで飛べなくなる子もいるだろう…。

「京都の伝統芸能「いけず」は先人のたゆまぬ努力、また若い後継者の日々の鍛練が功を奏し、途絶えることなく現代にも受け継がれている。」
には笑った。綿矢りさ調を堪能した。
そんな「いけず」文化の中でたくましく生きていく次女羽依もいい。
長女綾香の真面目で臆病な背中をそっと押したくなる。
京都の町の雰囲気に包まれたながら、三姉妹のこれからに想いを馳せ、みんな幸せになってねと祈る。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年8月8日
読了日 : 2020年8月4日
本棚登録日 : 2020年8月8日

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