ベランダー!なんて言い得て妙。
「ベランダーと名乗った途端に不思議と気持ちが張り切り、むしろ庭など金輪際持ちたくないというよう無理な気概に満ちてくる。こんなに狭い部屋に住んでいる私はなんと哀れであることよとか、しょせん仮住まいですからねなどといった消極的な気分はすぐに吹き飛ぶ。」
ほんとうに!
狭いベランダに増える鉢植え(株分けしては増える、できた苗は捨てられない、花が終わった宿根草たち、安売りしているとつい買ってしまう、)をあっちに置き、こっちに移動し右往左往している著者の姿が目に浮かぶ。
植物が芽をだす時、つぼみが花開く時、新しい葉がひとつ出ていた時、悦びに震える様子。
植え替えなど必要ないのに、高まる愛情と緩やかな成長の折り合いがつかず、不必要な世話をせざるを得なくなってしまう。
枯れかかっている植物を後悔と祈りの気持ちでじっと見つめるその姿。
アボカドを食べたら種を植えてしまう、その習性。
わかる。わかる。うちにもひとりベランダーがいますから。
ベランダーという人種の心の内の笑いと愛おしさと阿保らしさを描いて見せてくれた素敵なエッセイでした
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年3月28日
- 読了日 : 2021年3月28日
- 本棚登録日 : 2021年3月28日
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