七つのお葉は幼い頃に両親を川で亡くし、爺さまに慈しみ育てられている。
喪失の哀しみを持った子どもは、声なき声に耳を澄まし、異界に足を踏み込んでしまうのだろうか。
お葉の幼いながらも凛とした強さと優しさが、種を越えたものたちをも惹き付けるのだろうか。
山犬ランや黒猫おノン、千年狐のごんの守、大なまず、木の精など不思議な力を持つものに対する畏敬を念を持ち、人々の暮らしと共にある。
今はどうだろう。大切で美しいものを手放してしまったような気がする。
この不思議な話は、まさに阿蘇山のまわり山岳地帯から生まれた。雄大な阿蘇の自然と高千穂の神話、民間伝承や信仰が息づいている。
阿蘇の草千里、秋の野の尾花すすきが陽(ひい)さまに照らされ金色の光の波となって輝き、恐竜が走り回って遊ぶ情景が目に浮かぶ。
川が人々の暮らしと密接に関わり、あの世とこの世を繋ぐ。
長い歴史のある土地ならではの、時空間を越えた神と種を越えたものたちの大きな不思議で美しい世界を堪能しました。
爺さまの言葉に
「片目じゃの、片耳じゃの、ものの言えない者じゃの、どこか、人とはちがう見かけの者に逢うたら、神さまの位を持った人じゃと思え」とあった。石牟礼道子さんの声と重なる。
山福朱実さんの木版画が力強くあたたかい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年10月3日
- 読了日 : 2021年10月1日
- 本棚登録日 : 2021年10月3日
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