いちばんここに似合う人 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社 (2010年8月31日発売)
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【「あなた、ひりつくくらい孤独だってことに、何で知らんふりをするの?」
映像作家であり、パフォーマンスアーティストでもあるミランダ・ジュライという若手女性作家によって綴られたこの短篇集は、
繰り返し、人の孤独を、人と繋がりたいという欲の深さを問い詰めてくる。切なく優しい物語。】


16の短編の中に登場する主人公たちは、とてつもなく奇妙な役割を務めています。

ある女性は、プールのない砂漠の街で、一度も泳いだことのない老人たちに、洗面器ひとつで水泳を教えます。

家から二十七歩より遠くへ行けなくなった女性は、名前も知らない近所の子供との触れ合いに救いを求めようとします。

殺人鬼がゆっくりと階段を登ってくる絶体絶命の状況で、主人公が考えるのは恋人との行き詰まりについて…。


いったい何が彼女たちを奇行に走らせるのか。

語り手たちの言葉には、こんなセリフが含まれています。

「できることなら自分を包んでいるウザさを取り払って、一からやり直したい」
「思ったほどには愛し合っていない自分たちを、二人は暗黙のうちに互いに許し合った」


彼らの言葉の多くから漂ってくるのは、強烈な孤独。

みな、現在の生活に、しっくりこない気持ちを抱えている。

そして突拍子のないおかしな行動は、そんな孤独の支配から抜け出そうともがいているところに起因するのです。


恋人と別れた女性は知らない街で、老人たちに洗面器で水泳を教えます。

そんなことはバカバカしいと思われます。
でもちょっと待って。
人と繋がりたいという欲や行動というのは、
きっとそれくらい滑稽なものなのでは?

不器用な魂たちがうみだした、
人と人とのほんの一瞬の繋がりは、
震えるほど美しい。


この本の残酷なところは、アッサリとまた主人公たちを孤独の底に叩きおとすところなのですが、
一瞬の繋がりの光をみた彼らは、
最初の孤独とは、ほんの少し違う見え方のする場所へ導かれます。


きっと多くの人が思うでしょう。
この孤独な主人公は、私自身だと。




この小説から学んだことは以下。

人は誰しも孤独だということ。
だから怖がらず声をかけてみるべきだということ。
人と人との繋がりには失意を伴うことの方が多いということ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 詩集・俳句・短歌
感想投稿日 : 2013年6月23日
読了日 : -
本棚登録日 : 2013年6月23日

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