題名から、最初は歴史小説だと思った。
しかしこの書は、評伝だった。
しかも著者が「友」として、 マキアヴェッリの生涯を愛溢れる筆致で綴った、素晴らしい作品だった。
ルネサンス花盛りのフィレンツェに生を受けたマキアヴェッリが、日に日に傾いていく都市国家フィレンツェの官僚として東奔西走するも、時代の流れと政争に巻き込まれて失脚し、ついには代表作とも言える「君主論」を書く他なくなってく過程を、丹念に、時には大胆に、しかし常に愛ある言葉で描写している。
都市型国家の時代から領土型国家への移行期に当たる15世紀末から16世紀初頭にかけて、すでに領土型に移行してたフランスやスペインと、都市型からの脱却ができなかったイタリア半島諸国の、明確に「勝者」と「敗者」にわかれていく中で、その「敗者」になりつつある立場にたったマキアヴェッリが、何を見、何を考えたか。
そして、それがいかに彼の著作に影を落としてくのか。
それこそが本作の最もキモで、著者が最も表現したかったところだろう。
本書を読んだら、すでに読んだことがある人もない人も「君主論」を紐解きたくなるだろう。
ああ、同じ塩野氏の「チェーザレ・ボルジア あるいは華麗なる冷酷」、「海の都の物語」も読み返したくなってきた。
こうして物語は続いていく。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
歴史
- 感想投稿日 : 2010年10月10日
- 読了日 : 2010年10月4日
- 本棚登録日 : 2010年5月6日
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