汐のなごり (徳間文庫 き 24-1)

著者 :
  • 徳間書店 (2010年2月5日発売)
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感想 : 6
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「海上神火」「海羽山」「木洩陽の雪」「歳月の舟」「塞道の神」「合百の藤次」。
著者の故郷の山形県酒田市がモデルと思われる北前航路で栄える水潟の街、街中を流れる大船川(最上川)、そして北方にそびえる海羽山(鳥海山)を舞台にした6編です。各編の関連は無く、職業も女衒、商人、廻船問屋、町奉行、米の相場師など様々です。
しかし見事な文章です。最初の数行で、物語の中に深く沈んで行きます。職種が多様なためその説明に行数を取られやや冗長感が有るのは残念ですが、全体として完成度は高く、辛い状況を抜け出して前向きに終わる話が多く、読後感は良い。2009年の直木賞候補作。
北重人さん、2004年に初出版され2009年に亡くなりました。出版されたのはわずか9冊。
ポスト藤沢周平は一般的に葉室麟と言われていましたが、その葉室さん自身は藤沢周平の後継者を北重人だと考えていました。確かに生地が近い事も有って藤沢さんを彷彿させる作風です。ただ余りに近すぎ、既視感のようなものを感じるのが欠点かも。しかし、早世されなければきっと独自の良い作品を書かれたろうと残念に思います。
自分の本棚から抜き出した本なのですが、何故か読書記録が残って居ません。買った本は意地でも読む方ですし、読めば感想を書きます。まして大好きな北さん、読み始めたら読み終わったはずです。内容的にも記憶に無いので、あるいは何かに取り紛れて手を付けなかった本なのかもしれません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・時代
感想投稿日 : 2022年7月7日
読了日 : 2022年7月6日
本棚登録日 : 2022年7月7日

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