これからの「正義」の話をしよう ──いまを生き延びるための哲学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 早川書房 (2011年11月25日発売)
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本棚登録 : 978
感想 : 63

 哲学と聞くと、なんだか自分からは縁遠いような気がするかもしれません。難しそう、興味がない、そんな風に感じる人もいるでしょう。しかし私はそんな人にこそ、この本を紹介したいと思います。
 この本は一言で言うと、「世界の見方が変わる本」です。一つの章を読み終えて顔を上げた時、あなたの目に映る世界は少しだけ違う物になっているでしょう。

 政治哲学という分野について、この本はとても分かりやすく説明してくれています。実際にあった様々な事件や思考実験が例に出されており、それについて深く考察することで、正義の本質に迫っていきます。一つ、本文中の思考実験を例として見てみましょう。
「あなたは路面電車の運転手で、時速六十マイル(約九十六キロメートル)で疾走している。前方を見ると、五人の作業員が工具を手に線路上に立っている。電車を止めようとするのだが、できない。ブレーキがきかないのだ。頭が真っ白になる。五人の作業員をはねれば、全員が死ぬと分かっているからだ(はっきりそうわかっているものとする)。ふと、右側へとそれる待避線が目に入る。そこにも作業員がいる。だが、一人だけだ。路面電車を待避線に向ければ、一人の作業員は死ぬが、五人は助けられることに気づく。どうすべきだろうか?」(41頁)
 さあ、あなたはここでどう考えますか?ハンドルを切りますか?では、あなたの選択は道徳的に「正しい」ものでしょうか?有名な思考実験なので、すでに知っている人も多いかもしれませんが、今一度考えてみてください。

 結論を言ってしまうと、本文の中ではこの問いに対する答えは示されていません。しかし、様々な方面からの考え方の道筋は示してくれています。新しい価値観を知り、考えを深めるのにはうってつけな本です。ぜひ一度読んでみて欲しいと思います。

所蔵:本館2階西閲覧室(社会系) 311.1||Sa -, 蔵本2階中央閲覧室 311.1||Sa -
HN:ふろふき大根

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年6月19日
読了日 : -
本棚登録日 : 2020年6月17日

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コメント 1件

tokudaidokusho2さんのコメント
2020/06/21

哲学は難しいというイメージがどうしてもありますが、この本を読めば気軽に哲学について考えることができるのかなぁと思いました。有名なトロッコ問題も出てくるみたいなので、読んでみたいなと思います。
六甲おろし

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