治部の礎

著者 :
  • 講談社 (2016年7月20日発売)
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感想 : 9
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石田三成を主人公とした歴史小説。三成は秀吉の天下を支えた人物である。秀吉は晩年に独裁者として害悪になったされることが多いが、本書は九州征伐の頃からおかしくなっている。

伴天連追放令も自分の思い通りにならなければ気が済まない独裁者の異常性の表れになっている。近年はキリスト教禁教の動きをスペインやポルトガルの植民地になることを避ける施策と肯定的に評価する立場がある。これに対して『治部の礎』は独裁者の思い付きである。

秀吉の伴天連追放令は内心の自由の侵害と切支丹大名の黒田官兵衛を怒らせた。「個々の信仰にまで口を出すなど、天下人の行いに非ず。斯様な沙汰は下々を縛る無法と言わざるを得ませぬ」(124頁)。秀吉と官兵衛が疎遠になった理由は、秀吉が官兵衛の才能と野心を恐れて遠ざけたためとされる。これに対して『治部の礎』は伴天連追放令を契機とする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年1月13日
読了日 : 2023年1月13日
本棚登録日 : 2023年1月13日

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