からかい上手の高木さん(2) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

著者 :
  • 小学館 (2014年11月12日発売)
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感想 : 11
4

稲葉光史『からかい上手の(元)高木さん』(小学館)は、山本崇一朗『からかい上手の高木さん』のスピンオフ漫画である。大人になった高木さんを描く。高木さんは結婚して名字が変わり、娘が産まれた。名字が変わったため、(元)高木さんである。
高木さんのその後が幸福な展開になっていることは喜ばしい。『からかい上手の高木さん』がラブコメならば、『からかい上手の(元)高木さん』はホームコメディになる。
漫画としては『からかい上手の高木さん』のような強烈に突っ込みたくなる笑いは乏しい。本家あってのスピンオフと感じた。第2巻ではカーテンに隠れるなど『からかい上手の高木さん』のエピソードを下敷きにする話が目立つ。『からかい上手の高木さん』の力を再確認した。
第2巻の第1話「つんつん」は中学生時代の話である。この頃のやり取りの方がやはり面白い。この話のからかい対決の結末は漫画本編ではなく、余白のイラストにある。これが笑える。
『からかい上手の(元)高木さん』の特徴として小さな娘が親を振り回すことがある。しかし、母親は振り回されない。やはり高木さんは強い。
小さな娘が大人を振り回す点は、あずまきよひこ『よつばと!』に重なる。『よつばと!』では周囲の大人との交流で話が広がっていく。逆に脇役が主人公を翻弄するパターンもある(林田力「『よつばと!』第11巻、脇役が主人公を翻弄する逆パターンも」リアルライブ2011年12月1日)。
これに対して『からかい上手の(元)高木さん』は家族内で完結する。西片夫婦と娘の三人で物語が進む。家族物はご近所さんなど新たなキャラクターを登場させ、彼らをレギュラー化させて話を膨らましていくことが定番である。その対極である。親子三人だけの世界で物語を完結させるストイックさに驚嘆する。西片の職場の様子は第2巻でも分からない。仕事を家庭に持ち込まない。昭和の仕事人間は完全に過去のものになった。
登場人物を広げないストイックさは『からかい上手の高木さん』からの傾向である。思春期ならば互いに西片くんや高木さんのことばかり考えていても面白いが、社会人となると現実感が乏しくなる。
民間経済人的な意味での生活感を感じにくい。たとえ専業主婦であっても消費者としての生活感を描くことはできる。ここは東急不動産だまし売り裁判原告として声を大にして言いたい。滅私奉公の仕事中毒は時代遅れであるが、マイホーム主義も昭和的である。個人の個性が見えない点で裏表の関係にある。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: マンガ
感想投稿日 : 2020年5月1日
本棚登録日 : 2020年5月1日

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