純粋理性批判 6 (光文社古典新訳文庫 Bカ 1-7)

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  • 光文社 (2011年9月13日発売)
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純粋理性批判は、主に時間と空間を軸に、世界と人間の関係についての考察を続けてきたが、6巻ではいよいよ神の証明というデリケートな話題に切り込む。
さまざまな方位から、神の存在を分析していくが、いずれもカントの理論によって矛盾が露呈する。要するに神という存在は虚構なのか。
しかし、神は存在しなければならない、というのがカントの結論のようだ。ようだ、と書いたのは、小生はカントの結論が読み取れず、解説を読んでようやく理解したからだ。理解、というか、解説にそう書いてある、というのが正直なところだ。
そういった難解さがあるとはいえ、カントの分析眼は鋭い。そして、時代的に、神はいない、という結論はありえないとはいえ、存在は証明できないが、存在はしなければならない、という落としどころは、かなり挑戦的だったのではないか。
カントは純粋理性批判という一連の書物において、人間とはこの世界において、現実だと考えているものは果たして本当に現実なのか、それは意識が作り出したものであり、誰もが同じ「現実」を生きているわけではないという観点から、時間や空間は本当に継続的に存在しているのか、神はいるのか、というところまで理論を展開した。人間はみずから作り上げた虚構の中に生きているのだなあ。
いよいよ次は最終巻となる。
ここまで広げた理論をどのようにまとめるのか楽しみだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人文・思想
感想投稿日 : 2022年4月17日
読了日 : 2022年4月17日
本棚登録日 : 2022年3月19日

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