千利休―無言の前衛 (岩波新書 新赤版 104)

著者 :
  • 岩波書店 (1990年1月22日発売)
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感想 : 50
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白洲正子の男友達の会話から赤瀬川原平を知り読んだ一冊。想像に反してとても面白かった。
映画「利久」の脚本を依頼され、前衛芸術家が自らの作品や視点と交えながら、千利休と密接な関係となる秀吉、そしてそれぞれの茶道またその時代に関して解いていく。着眼点やまとめ方、また現代に即した例え話も面白い!

現代人の想像する利久はか細く繊細優美なイメージだが、実際は漁業組合長のようなずんぐり無骨な男性だったそう。ただお茶を点てるときは女性のように繊細で美しい所作だったそう。
何世代も前の一休和尚を心の柱とし、禅の思想を大切にした。一休和尚のゆかりのある大徳寺の山門の金毛閣を寄進したことで、お礼とし古渓の計らいで利久木像も作られる。
しかし秀吉の利久弾劾のいいがかりでこの木像も貼り付けにされているしまう。利久自身にぐうの音を吐かせたいのだか、面と向かっては負けてしまう。彼に対する尊敬と反発、思い入れと駄々っ子的な感情で本気か冗談かわからない秀吉の木像の張り付けというやり方らしい。
この関係性が他の章でも面白い。


赤瀬川原平の観察眼で世の中が見れたらこの世界はとてつもなく幸せなんだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年3月5日
読了日 : 2020年3月5日
本棚登録日 : 2020年3月5日

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