問題解決の心理学: 人間の時代への発想 (中公新書 757)

著者 :
  • 中央公論新社 (1985年3月23日発売)
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本棚登録 : 377
感想 : 29
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問題解決の心理学とあるが、
こういう心持ちや気構えなら問題解決が進んで仕事の成果が上がる! といったようないわゆるハウツー本ではない。

30年以上も残っている名著と読んでよい著作であり、
その内容の主眼は「人はどのように問題を解決していくのか」という精神構造上のプロセスを研究し、まとめていったものである。

面白いのはこの範囲にはいわゆる問題を解決する事だけでなく、問題を発見し表現する事も含まれる。
つまり目的を持つという事を考えている。

その議論のモデルとして3つの小説を引用している。
お話として読んでしまえばそれまでだが、登場人物が状況の変化の中でどのように判断・決断し、もしくは適応していったかという視点で見ると大変興味深い。

また著者は工学系の大学院まで進んだのちに、心理・人文系の道に進んだので文理両面で話が展開されていくのも非常に面白い

詳細は割愛するが、問題解決を考える上で重要な機能は以下である。

・生きて働く記憶
・原因-結果、手段-目的による物事の理解
・問題の適切な表現
・知識のダイナミクス
・自分を見る機能
・感情のコントロール機能
・意味敏感性
・知識の構造化可能性

そして
・自由に目標を作り出す能力である

かなり前に書かれた本でありながら、人工知能とその可能性についても言及されている。
曰く、確かに人工知能は的確に表現された問題に対して解決するのは出来るようになるだろう。
しかし目的・目標を設定し、問題を適切に表現するのはかなり難しいだろうし、出来ても相当先になるのではないか。

私もそれには同意だし、人工知能に仕事を取られると恐怖するなら、そこに一つのヒントがあるのではないだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年12月4日
読了日 : 2022年12月4日
本棚登録日 : 2022年12月4日

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