東京タワー

著者 :
  • マガジンハウス (2001年12月1日発売)
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感想 : 675
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これまで読んできた江國香織の小説の中で、
驚くほど官能的だったような気がする。

黒木瞳と岡田准一が主演で映画化されたというこの小説は、
映画の中で、映像として具体を持ってしまったら、
どれだけ刺激的に映ってしまうのだろう。
少しどころではなく、めちゃくちゃ気になる。
気になる、というより、危惧に近い。

主人公の透と、その親友の耕二。
ともに19~20歳の大学生で、
それぞれが年上の女性と恋愛関係を持っている。

透の恋人・詩史は夫と二人暮らし、
彼女自身は代官山でセレクトショップを営んでいる。

透が初めて詩史と会ったのが17歳の時で、
それから約3年くらいの付き合いの二人なのだが、
私は透の視点に立って読み進め、
透が詩史に感じているであろう、
同い年からは感じられない余裕だったり、
愛されている幸せだったり、
時折遠い存在に感じてしまう不安だったりを読み取って、
当時の自分の気持ちをめちゃくちゃ投影させて読んだ。

悲しくて、愛おしくて、
世界には本当にそれ以外いらない、と思っていた
当時の自分を、今は少し痛々しくも愛おしくも思う。

私は、自分の経験は失敗だったとも思うけれど、
失敗から、学んで今が積み重なっているとも実感する。

自分で作り上げた幻想の孤独感から抜け出して、
成長する一歩手前までを描いたこの小説は、
文字で表現される叙情的な物語だからこそ、
私は受け入れられたように思う。

映画は、好奇心で見てみたいと思うけど、
多分見続けることはできないと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 現代小説
感想投稿日 : 2022年7月13日
読了日 : 2022年7月12日
本棚登録日 : 2022年7月13日

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