この本を根底を流れる思想は、新しいイノベーションは古い既得権者に
妨害されてしまうということ。
そして、古い既得権者は力を持っているため、新しいイノベーションが
邪魔されないためには、政府の力が必要であり、今までは政府が
新しいイノベーションを保護してきた。と言っている。
実際、ビデオデッキができたとき、ハリウッドは裁判を起こし、
それは窃盗だと言った。しかし、結局ソニーが勝ち、ビデオデッキは普及した。
今、インターネットの世界では、既得権者が新しいイノベーションを邪魔し、
技術革新を邪魔している。ということを、力説している。
この既得権者の価値観と一般人の価値観は実は同じであるため、
先見性のある人が啓蒙しないと、世論として既得権を守る方向に行きやすい。
この400ページ以上の内容は、そこに尽きる。
我々は、すべてのものがコントロールされていることが民主主義だという錯覚に
陥ってしまっている可能性がある。
人の利益を、今までなかった方法で邪魔するものは、ルール違反だと。
この世のものはコントロールされたものと、フリーなものの2種類に分類できる。
コントロールされたものとは、お店で売っているお菓子とか、microsoftのpowerpoint
とか。誰かの許可がないと利用できないものがそれ。
フリーなものとは、道路とか、数式とか、誰の許可もなく利用できるもの。
無料=フリー、有料=コントロールではなく、有料でフリーなもの(例えば高速道路
のように、料金は支払わなければならないが、利用が自由であるもの)として、
インターネットがあってもいいのではないかと述べている。
こうすることによって、どのような技術革新やビジネスの革新が起こるか、
それは今は説明できないと筆者はいう。そして、それが一番難しいところなのだと思う。
例えば、バーナーズ=リーという人が、初めてWWWの概念を考えて専門家に
サポートを依頼したとき、専門家は誰一人この有用性がわからなかったそうだ。
1980年代後半の話である。
つまり、この先、どんな革新があるかわからないが、その場が提供されていない
限り、革新は起こらないと筆者は述べている。
デジタル世界は、モノの世界より、アイデアの世界に近い。
サイバー空間のコンテンツは、閉ざすことも排他的な占有も不可能なように
設計されている。つまり、サイバー空間のリソースを、現実空間のリソースと
同じように扱うことはできないし、扱うべきではない。
と筆者は述べていて、僕も同じ意見だ。
例えば、実際にあった話として、カナダの法律はテレビをストリーミングすることは
合法だった。しかし、これはアメリカからも見れて、アメリカの法律では違法だった。
アメリカはこれをやめさせようとしたが、そもそも、そんなことができるようにデジタル
社会は設計されていない。
筆者はとても頭のいい人で、とても有用なことが多く書かれているが、
日本語訳が自分に合わず、理解できない部分があった。残念だ。
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他の人のレビュー
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0719.html
http://orion.t.hosei.ac.jp/hideaki/commons.htm
- 感想投稿日 : 2010年10月10日
- 読了日 : 2010年10月10日
- 本棚登録日 : 2010年10月10日
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