東京の美しいドボク鑑賞術

  • エクスナレッジ (2023年5月1日発売)
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感想 : 8
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東京という都市を、その前身の江戸を含めて歴史の「主人公」と感じるようになったのは門井慶喜の「家康、江戸を建てる」と読んだあたりからだったような気がします。(さかのぼれは荒俣宏の「帝都物語」という作品もありますが、その時は歴史の「主人公」というより「舞台」としていか感じていなかったように思います。)ちょどその頃はTOKYO2020に向けての工事もさかんで1964年のような東京大改造が行われるような気分になっていたかもしれません。同じタイミングでオスカー・ニーマイヤー展に行って首都を作るというダイナミックなデザインに魅了されたりもしました。ただ一人の天才の構想によるゼロからつくった人工都市ブラジリアと、家康を祖としながらもそれ以前の太田道灌を含め長い時間をかけてアップデートを重ねて来た江戸・東京の違いに「首都力」の差を感じたりしました。その後、出会ったのが陣内秀信の新書「水都 東京」です。江戸・東京アップデートの大きなテーマが用水、治水、交通網としての「水の流れ」であることを教えてくれました。そして今年読んで出色の面白さだった鈴木浩三の新書「地形で見る江戸・東京発展史」でもまさに江戸・東京が大火に見舞われながら「水と生きる(!?)都」として改造を重ねて来た歴史を図表で示してくれました。実は本書は、そんな文脈で手にした訳ではありません。たまに行う東京街歩きのコース設定に目印としてのランドマークを見つけようとしただけです。しかし、取り上げあれている土木建造物が「水」との関係によって作られたインフレであることにびっくりしました。東京の数々の橋に込められた物語とデザイン、今までは漫然と渡っているだけでしたが、これからはちょっと意識したいと思います。隅田川にかかる橋をジグザグと渡るコースも面白いかも、です。1964年の東京オリンピックの首都高建設に象徴されるように、江戸から東京への近代化は「水都」を暗渠化することだったかもしれません。この写真集が紐解いてくれるインフラの物語とデザイン、そして数々の土木建築家の人生を楽しむことは、その覆いを外すことなりそうです。なんだかよくわからなかったTOKYO2020のその先の東京の物語もそこら辺から始まるような気がします。それにしても神田川・環状七号線地下調節池、一回潜ってみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年6月25日
読了日 : 2023年6月23日
本棚登録日 : 2023年6月18日

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