骨狩りのとき

  • 作品社 (2010年12月25日発売)
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カリブ海にある西インド諸島・イスパニョーラ島。
この島にあるスペイン移民の末裔たちの国家、ドミニカ共和国。
この国は1930年代、隣国の黒人国家・ハイチから仕事を求めてやって来たハイチ人たちを虐殺したと言う過去があり、本書はこの史実を基にして書かれたフィクションです。

主人公はドミニカ共和国の白人一家でメイドとして働くハイチ人の若い独身女性。
彼女や彼女同様に同国で働くハイチ人たちをドミニカ共和国を統べる総統が指揮する民族浄化作戦が襲い、彼らはハイチへ向けて必死に逃亡することになります。

本書はその逃亡の過程、そして逃亡成功後の生きたまま死んだ様な日々を主人公の両親の思い出を織り交ぜながら描いたものです。

当初テーマとなった虐殺の事を知らなかった為、ストーリーの背景が理解し辛かったのですが、Wikipediaのドミニカ共和国の項を読み、上記の総統とは誰か?、総統の末路は?等を知り、理解を深めることができました。
私の様に両国の歴史に明るくないと言う方は、本書を読む前にまず歴史的背景の把握を行うと良いかも知れません。



尚、巻末に以下の文があります。

「名を成した者たちは、決して本当に死ぬことはありません」
「煙のように早朝の空気の中に消えていくのは、名もなく顔もない者たちだけなのです」


総統の名は残り、彼の犠牲者たちは煙になった。
そして著者は主人公の口を借り、煙になった彼らに名を与えたかった。

そう言う事なのかも知れません。

一読をおすすめします。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2012年7月20日
読了日 : 2012年7月20日
本棚登録日 : 2012年7月20日

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