大ヒットの方程式 ソーシャルメディアのクチコミ効果を数式化する

  • ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010年9月15日発売)
2.92
  • (0)
  • (7)
  • (23)
  • (8)
  • (1)
本棚登録 : 161
感想 : 21
4

最近、鳥取大学の研究チームが考案した映画のヒット現象を予測する数理モデルに関する報道がありました。
この数理モデルに興味を感じて少し調べた所、本書の著者の一人で数理モデルを考案した鳥取大学教授・石井晃氏のブログによると、上記報道で取り上げられた英物理学会誌「ニュー・ジャーナル・オブ・フィジックス(New Journal of Physics)」へ投稿した論文は、2010年に発行された本書の内容及び本書出版後の研究成果をまとめたものとの事。
そこで、本書を読んでみました。

構成は、序章から7章までと付録(数理モデルをその構築方法から解説)からなり、

序章でヒットを予想する数理モデルが誕生した経緯の説明と「数理モデルとは何か?」と言うテーマで簡単な解説を行い、
1章では「ヒット予想の数理モデルはどの様な考えに基づいて考案されたか」を解説。
続く2章では実際に「ダ・ヴィンチ・コード」「トランスフォーマー」「HERO」(木村拓哉主演)「どろろ」などの映画の観客動員数と数理モデルの計算結果を比較し、数理モデルの実用性を提示。
3章、4章では数理モデルの分析結果に基づき、様々な映画のヒットの理由を考察。
5章ではこの数理モデルが映画のヒット予想だけでなく地方イベントの成功予測などにも使える事を証明。
6章ではインターネットの普及により変化するマーケティングについて解説。
最終章の7章では、この数理モデルを用いたマーケティング手法の概要説明を行っていました。

アマゾンのレビューでは実用性が無いと言った低評価のものがありますが(2012年7月11日確認)、実際の所、本書の肝は数理モデルの構築過程を解説した付録部分であり、それ以外の全ては、はっきりと言えば(数理モデルが如何に役立つか等を述べた)その為の前フリみたいな感じです。
従って、この付録部分を理解するだけの数学的トレーニングを積んでいない人には、本書は余り役に立つものでは無いのかも知れません。

尚、肝心の付録部分を理解するのに必要な数学の知識レベルですが、理系学部の大学初年度で習う微積分を(その考え方だけでも)理解できていれば、付録を読み解く事はそんなに難しい事ではないのではと思います。
この場合、丁度いい感じの頭の体操になるのではないでしょうか。


ヒットを予想する数理モデルに興味をお感じで、ちょっと頭に刺激の欲しい方におすすめです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年7月11日
読了日 : 2012年7月11日
本棚登録日 : 2012年7月11日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする