タイトルは「なにを買ったの? 文房具。」
本書を開き、片岡さん自身が撮影した文房具を眺める。
すると、「なぜ買ったの? その文房具」という疑問と好奇心が湧いてくる。
購入理由は、趣味であったり、文房具からの呼びかけであったり、その文房具を快適に使っている自分を想像できたからであったり。
でも、私が感じたのは、これらの文房具は片岡さんにとって、おもちゃであったり、アクセサリーであったり、はたまたオブジェであったり、現代美術作品なのではないかということだ。
それに、本書でのように被写体、つまりモデルでもあるのかもしれない。
それでは、それら文房具はとても美しく、高価なものかというと、ちょっと違う。片岡さんが購入した文房具はむしろ消耗品であり、一般に広く普段使いされている類いのものだ。
それでは、「用の美」を求めているのかというと、これまた違う。明らかに未使用のものが少なくないようだから、違うと思う。大量といって差し支えないほどの文房具を一時に買い、自宅のしかるべき場所にストックしているようだ。
でも、これは個人的趣味嗜好であるのだから、探究しても仕方ない。ただ、片岡さんの姿を想像して楽しむことにした。
長閑な日。暑くも寒くもなく快適な日だ。肩の凝らない服、とても歩きやすいスニーカーを身に着け、目的もなく散策に出掛ける。きっと35ミリのカメラも持って。文房具店がある。覗いてみる。片岡さんの感性に訴えてくる文房具たち。片岡さんの頭の中では、どんな反応がおこっているのだろう? ワクワク? ウズウズ? 良しよし? ある文房具を色違いで全部買う。サイズ違いで揃える。持ち帰るのが重くて大変そうだ。カフェに入り、大きなマグカップに入ったブラックコーヒーを飲みながら、戦利品を眺め悦に入る。帰りはタクシー。帰宅後、大きな作業机の上に、買ってきた文房具をすべて並べてみる。納得顔。膨らみ溢れる想像。これらの文房具に対する自分の気持ちを文章にしたらどうだろう? 1冊の本にまとめたら? 写真も載せよう。自分で撮って。昼すぎの自然光がいい。装丁は? 様々なアイデアを楽しむ。やがて1冊の本が出来上がる。
そのような過程を経て、本書は誕生したのかなあ。
本書の表紙デザインは、同時に読んでいた『暮らしのヒント集』の表紙と並べてみたくなった。並べてみよう。こんな行為は、片岡義男っぽくないか。
- 感想投稿日 : 2009年10月1日
- 読了日 : 2009年9月30日
- 本棚登録日 : 2009年10月1日
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