観念と言葉ばかりが先行し、それを現実世界に根を下ろさせる決断と実行を伴わなかった、19世紀ロシアの――しかし現代にもしばしば見られる――脆弱なインテリ青年=「無用者」の惨めで哀れな姿を描いた小説。高邁な理想を語りながらもついぞそれを現実化できずに生涯を閉じたルーヂン。彼がナターリヤに決断を迫られる場面での振舞は、何とも情けないものではあるけれど、しかし如何にも実際に在りそうな話だ。観念の中では大層な体系を築いていながら、ついに現実世界の中で具体的な自分の場所・役割を見出せない"根無し草"は、いつか人生に疲れ果ててしまう。現実の中で具体化・限定化されてしまうことへの、忌避。全く他人事ではない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ロシア文学
- 感想投稿日 : 2011年3月26日
- 読了日 : 2008年9月21日
- 本棚登録日 : 2011年3月26日
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