日本国債(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2003年11月27日発売)
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感想 : 40
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小説としては、結構無理な設定なような気もするが、本書の価値は、資本市場の中でも地味な存在で一般人の関心も薄い国債市場というものの現場を臨場感を以て描き出し、かつそのいびつな市場構造や日本の財政問題、そしてこれらを放置する政治・行政の不作為についての問題提起をしている点だろう。実際、あとがきで香田さん自身がそうしたことを本書を書いた意図として述べており、本作を発表後、世界中のメディアからの取材が殺到したという。NETで調べたところ、国債シンジケート団は2006年で廃止され、プライマリーディーラー制度が導入されたという事であるから、市場の問題点の一つは解消されたということであろう。しかし、本作が書かれた2000年の時点から12年が経過している現在、国の財政はさらに悪化の一途をたどり、ついに公的債務残高が1000兆円を超えGDP比で2倍以上となっている事態には本当に失望する。変わらないのは、本書で描かれているように政治や行政の無能さということなのか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2018年10月8日
読了日 : 2012年1月8日
本棚登録日 : 2018年10月8日

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