人の愚かさや身勝手さ、人生の悲哀をイヤというほど痛感させる、子ども向けどころかむしろとっても大人向けなアンデルセン童話集。
いい歳した大人だからその味を噛み締めて色々なことを考えられるし、楽しめる。
けれど、もし未就学児の時にこれを読み聞かされたら、正直全く楽しくなかったどころか理解不能と思う。
いや、普通の親なら、これは子どもに与えないと思う。
それぐらい、世知辛テイストの強い作品集。
エドマンド・デュラック(1882-1953)の流麗な挿絵は大人視点では見事だけれど、異形の生き物が多く描かれ、茶色味のまさった地味な色彩は子どもウケはあまり良くなさそうだし。
内容的にも視覚的にも、徹底的に大人仕様。
「雪の女王」、「豆つぶのうえに寝たお姫さま」、「皇帝の新しい服」、「風の話」の四編を収録。
一般的には「裸の王様」の名のほうで知られている「皇帝の新しい服」なんて、職場で上司の顔色を伺ってうまく意見を言えない社会人を明らかに皮肉ってる。
でも、企業勤めの人には、覚えがあって胸が痛いと同時にわりと共感せずにはいられないと思う。
「風の話」なんて、裕福で美しい貴族のお嬢様が、父の事業の失敗と狂気ゆえに没落して、結局…。
いやもう、夢ある子どもには読み聞かせられないよ…。
でも、いい歳の大人である私は、短くも巧みに切り取られて描かれたそれぞれの人生の悲哀を噛み締めずにはいられない…。
アンデルセンの意外で奥深い世界が楽しめる一冊です。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2018年10月28日
- 読了日 : 2018年10月28日
- 本棚登録日 : 2018年10月28日
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