初恋は得てして実らないものだけど、それでもこの物語は、愛おしさよりも、物悲しさと切なさ、そして、孤独が際立っていて、寂寥感に胸が締め付けられました。
幼い日の初恋の10数年の軌跡を計63分の連作短編として纏めた新海誠監督のアニメーション作品。
双方の両親が転勤族だったため、共に小学校四年生の時に東京の学校に転校してきて出会った、貴樹と明里。クラスメートとはしゃぐよりは本を読むことが好きだった二人はすぐに意気投合する。けれど、中学校進級時に明里は栃木へ引っ越すことに。二人を繋ぐのは、文通のみ。そして、二年生進級の機会に、今度は貴樹が鹿児島の離島に引っ越すことに。
これまで以上に広がる距離を前に、まだ雪も降る三月の寒いある日、二人は栃木での一年ぶりの再会を果たそうとするけれど…。
物理的な距離と時間の流れに隔てられる中で温度差が出来て離れていってしまう男女の姿は、世の無常の真理を確かに現しているのと思うのだけど、何かが胸にわだかまってしかたがない。
あまりにも対照的になってしまう二人の人生を同時に観ることになってしまうからかも知れません。
その対照性から、イアン・マキューアン原作でシアーシャ・ローナン主演の映画「追想」を思い浮かべたのだけど、この作品は「追想」に残された欠片ほどの救いもないという…。
構成は、恋を知ると共に人生の無常を悟る小・中学生時代を描いた第一編「桜花抄」、高校時代の貴樹を他者の視点から描いた第二編「コスモナイト」、成人後の二人を描いた「秒速5センチメートル」の三編からなっています。
実在のものを入れ込む緻密な風景描写、世界観を構築しながら登場人物の心情を代弁するような音楽の巧みな使い方など、新海誠監督らしさも存分に感じさせる作品。
ここから、どんどん次の作品に繋がったんだな、と思うつくり。ただ、人物の画は荒いというか少しつたないくらいなので、人によってはそこで評価が分かれそう。
個人的には割と好きな部類に入ったのだけど、主人公が悲しい目に遭う作品に抵抗のある人には正直オススメはできない作品。
- 感想投稿日 : 2019年9月29日
- 読了日 : 2019年9月29日
- 本棚登録日 : 2019年9月29日
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