9.11によって突然父親を失ったアスペルガー症候群の少年が、父の遺品にあった「鍵」の意味を求めて、ニューヨーク中を探し回るお話。
アスペルガー症候群の気があり、人と関わったり、自分の思いを伝えることが苦手な11歳のオスカー。
彼の良いところや興味関心を伸ばしながらも必要な社会性を身につけさせようと、父のトーマスは、「ニューヨークで失われた第6地区を探す」という宝探し的なフィールドワークを一緒にしながら、他者と関わらせていた。
しかし、9.11米同時多発テロ事件によって、オスカーは自身の最大の理解者であった父親を突然失い、心のバランスを崩してしまう。
事件から約一年経ったある日、父の遺品の中から「ブラック」と書かれた封筒の中にある鍵を見つけたオスカーは、父の残した秘密を解き明かすため、ニューヨーク中の「ブラックさん」を探すことにする。
父に習った地図の読み方、計画の立て方、そして、独自の工夫をもって、472人いるブラック氏を順番に訪ね歩くオスカー。
しかし、当然ながら、そう簡単には謎は解けない。途方に暮れかけながらも調査を続けるオスカーは、ある日、テロ事件の直後から祖母の家に間借りしていた謎の男と知り合いになり、二人で調査をすることに。
そして、そんなオスカーの途方もない計画と行動など知るよしもなく、すれ違ってばかりだとオスカーが思っていた母リンダはと言えば、実は誰よりもオスカーのことを理解していて…。
120分程度の中に、愛する人を失った人々がそれぞれに抱える絶望や悲しみ、そして、心の傷の共有や労わり、ようやく得た許しによって再生して行く姿等が描かれており、泣きそうになりました。
特に、まだ子供のオスカーが、ひどく後悔しながらも誰にも明かせず、たった一人で胸に抱え込んでいた苦しみが明かされる過程には、こちらまで辛くなりました。
物語の最後は、決してオスカーが望んでいたものではありませんでしたが、失望を経験しながらも、誰かへの感謝と他人の痛みに思いを馳せるまでに成長した姿には、グッときます。
父は戻ってこないけれど、父の思いと教育と努力は確かに意味があり、息子の糧になったんだなあ、と感情的と同時に温かい気持ちで観終えた作品です。
- 感想投稿日 : 2018年1月21日
- 読了日 : 2018年1月21日
- 本棚登録日 : 2018年1月21日
みんなの感想をみる